バイクに乗車していて交通事故に遭ったら、自動車事故のケースよりも被害が大きくなりやすいです。
バイクは車体も軽く、自動車と違ってライダーの身体がむき出しになっているので、重大なケガをしたり死亡事故につながったりしやすいのです。
バイク事故の場合、過失割合も自動車事故の場合とは異なります。
今回は、バイク事故の危険性と自動車事故との違いについて、解説します。
1.バイク事故では、危険性が高くなる!
日常的にバイクを使っている方はたくさんおられるのですが、その場合、交通事故に注意する必要があります。
バイクが交通事故に遭ったときには、自動車同士の事故よりも被害が大きくなることが多いためです。
バイクと自動車が接触したら、自動車側にはほとんど傷がつかなくても、バイクが転倒してライダーが大けがをしてしまうことも多いです。
ライダーは、自動車と違って身体が外に出ているので、事故の衝撃をまともに受けてしまいます。
そこで、バイク事故が起こったら、自動車同士の事故よりも、重傷や死亡事故につながってしまうおそれも高くなるのです。
バイクに乗るなら、こうした事故の危険性をしっかり認識して、対策を練っておくことが大切です。
2.バイクの事故率はどのくらい?
それでは、実際にバイク事故は、世の中でどのくらい起こっているのでしょうか?
2-1.バイクの登録台数と事故数
まず、平成28年において、バイク(原付のぞく)の登録台数は、約360万台です。
原付第2種を入れると530万台程度、原付第1種を入れると1121万台程度となります。
そして、バイク事故の件数は、31000件程度です。
原付を入れると、63000件程度となります。
バイク事故の中でも死亡事故や重傷の事故に限ると、死者数は460人、重傷者数は5000人程度です。
2-2.自動車の登録台数と事故数
これを、自動車の場合と比較してみましょう。
自動車の場合、登録台数は6100万台程度です(乗用自動車。小型車や軽自動車を含む)。
そして、交通事故数は41万件程度です。
死亡事故と重傷の事故に限ると、死者数は1338人、重傷者数は1万人程度です。
(以上、総務省統計局、一般社団法人自動車検査登録協会、一般社団法人日本自動車工業会のデータより。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001176564
http://www.airia.or.jp/publish/statistics/number.html
http://www.jama.or.jp/industry/two_wheeled/two_wheeled_3t1.html
数字だけでは、バイク事故の事故率がどのくらい高いのかがわかりにくいので、事故の割合を計算してみます。
2-3.バイク事故の死亡率、重傷事故率
バイクの場合、登録台数は360万台ですが、死者数は460人なので、死者の割合は0.012%、重傷者は5000人ですから、重傷者の割合は0.138%となります。
2-4.自動車事故の死亡率、重傷事故率
次に、自動車事故の死亡率と重傷者の割合を見てみましょう。
自動車の場合、登録台数は6100万台で、死者数は1338人ですから、死者の割合は0.0021%です。
重傷者は1万人程度なので、その割合は0.016%です。
この2つの結果を比べると、バイクの場合、自動車よりも10倍程度も死亡率や重傷率が高いことがわかります。
バイクに乗っていてひとたび事故に遭うと、自動車に乗車している場合よりも、こうした重大な結果が発生してしまうおそれが飛躍的に高くなるということです。
3.バイク事故で多いケガ
それでは、バイク事故に遭ったとき、どのようなケガをすることが多いのでしょうか?
この場合、頭や頸部(首の部分)、手足の部分にケガをすることが多いです。
頭を打つと、脳挫傷になって即死することもありますし、重大な後遺障害も残りやすいです。
頸部に損傷を受けた場合でも、身体が不随(全身不随や半身不随など)になることがありますし、むちうちなどにもなります。
さらに、ライダーの場合、手足がむき出しなので、これらの部分にダメージを受けることが多いです。
たとえば、手足が切断されてしまうこともありますし、関節などが動かなくなってしまったり、変形してしまったりします。
身体が外に出ているので、胸部や背中、腰や腹部にダメージを受けることもあります。内臓が大きく損傷されたら死亡してしまうことも珍しくありません。
バイク事故では、重傷の事故が多いために後遺障害が残ることも多いです。
頸部を損傷して麻痺などの神経障害が残ることもありますし、足が損傷を受けて車いす生活になってしまうこともあります。
頭に損傷を受けて高次脳機能障害や意識障害が残ることもありますし、腰や背中に後遺障害が残ることもあります。
バイク事故では、死亡せずに済んだとしても、重大な後遺障害が残ってその後一生制限された生活しかできなくなる可能性が高いです。
頭に重大な損傷を受けると、いわゆる植物状態になってしまうこともあるので、そのようなことのないように、運転の際にはくれぐれも慎重になる必要があります。
4.バイク事故を防ぐための装備
バイク事故を防ぐためには、装備が大切です。
まず、ヘルメットは必ず着用すべきです。ヘルメットにもいろいろな種類がありますが、安全のためにはフルフェイスのものを選びましょう。
ヘルメットを装着していないと、事故の危険が高まるばかりか、事故が起こったときのライダーの過失割合も上がってしまうので、要注意です。
また、胸部用のプロテクターもつけておくことをおすすめします。
服装も、長袖と長ズボンにして、手袋とブーツを身に付けるべきです。
少しくらいだからいいや、と思って半袖などの軽装でバイクに乗っていると、事故に遭ったときのダメージが大きくなります。
できるだけ、厚手の衣類を身につけておいた方が安心です。
5.バイク事故の原因
それでは、バイク事故はどのようなことが原因で発生しているのでしょうか?
いろいろありますが、以下のようなことが原因になっていることが多いです。
5-1.バイクの前方不注意
バイクのライダーは、前方不注意になりやすいです。そもそも自動車よりも視界が狭いですし、体制もかがんだ姿勢になります。
しかもヘルメットをしていますし、高速で運転していることも多いです。
そこで、ふと脇見をしたり気を抜いて運転をしたりすると、簡単に事故につながってしまいます。
5-2.バランスを崩しやすい
バイクは、自動車と比べてバランスを崩しやすい乗り物です。
自動車なら、横倒しになることは珍しいですが、バイクなら、カーブを曲がり損ねただけで簡単に転倒します。
自動車とバイクが接触したとき、自動車は車体に傷がつく程度でも、バイクが転倒して大けがをすることが非常に多いです。
5-3.急ブレーキをかける
バイクは、自動車とブレーキの構造が違うのをご存知でしょうか?
バイクのブレーキは、前輪と後輪がそれぞれ独立しています。
そこで、止まるときには前輪と後輪の両方で止まることができます。
また、乗り物というものは、車体が軽いとブレーキがかかりやすくなります。
大型車の場合、いつまでも止まれないことを考えたらわかりやすいでしょう。
バイクは自動車より軽いですから、その意味でも止まりやすい乗り物です。
しかし、このように急に止まることは、後ろの自動車にとっては予測しにくいことです。
自動車の感覚では、「そんなに急に止まらないだろう」と思って運転しているところに、バイクが急に止まったら、衝突して事故につながってしまいます。
5-4.渋滞時など、死角に入りやすい
バイクが渋滞している道路を走っていると、自動車の間をすり抜けて走ることができます。
このことは、バイクのメリットでもあるのですが、事故の原因にもなります。
車体の小さいバイクが自動車の間をすり抜けて走っていたら、自動車からは発見しにくく、突然飛び出してきたように見えてしまいます。
そこで、バイクが他の車の間から出てきたところ、自動車とぶつかってしまうことがあります。
5-5.左折時の巻き込み事故
バイクが直進しようとしているところに自動車が左折をして、巻き込まれてしまう事故も多いです。
バイクは、高速で後ろから直進してくるので、前にいる自動車が左折にもたもたしていると、バイクが追いついて自動車に衝突してしまうのです。
バイクを走行しているときに、前方で左折車がいる場合には、飛び込んでいかないように注意しなければなりません。
5-6.無茶な運転をする
バイクのライダーの中には、無茶な運転をする人がいます。
たとえば、バイクは車体が小さいので、それを活かして自動車の横を無理矢理すり抜けようとしたり、無茶な追い越しをしようとしたりすることなどが多いです。
すると、前を走っている車や対向車などと衝突してしまいます。
また最近では、しばらくバイクに乗っていなかった中年以上のライダーが久しぶりにバイクに乗って起こる事故も増えています。
こうした人は、10代や20代の頃、バイクにはまっていて、結婚や子育てのためにバイクを辞めていたけれども、落ち着いてお金もできたので、また乗ろうか、と思って大きなバイクを買ったりします。
年をとると、昔と同じようには運動神経や注意力などが働かないのですが、そのことを考えずに昔と同じような感覚でバイクを運転するため、事故につながってしまうのです。
6.自動車から、バイクはどう見えているの?
バイクに乗っているときには、自分が自動車からどのように見えているのかを常に意識しておく必要があります。
自動車は、バイクと全く体感が異なるので、バイクが予想していない行動をとることがあるためです(このことは、自動車からしても同じことで、バイクは自動車が予想していない行動をとります)。
6-1.距離や速度の体感が異なる
自動車は、バイクよりも大きいので、同じスピードを出していてもゆっくり進んでいるように感じます。
これに対し、バイクは車体が小さいので、同じ速度でも早く感じます。
同じように、感じる車間距離もバイクと自動車とでは異なります。
そこで、自動車は、バイクが近づいても、「そんなに急には追いついてこないだろう」「まだ距離があるから大丈夫」と考えていることが多いです。
バイク側からすると、「自動車がわかっているから避けてくれるだろう」と期待しているのですが、実際にはそうならずに接触してしまい、事故になります。
6-2.視野が違う
バイクは、自動車と比べて視野が狭いです。
しかし、自動車の運転手は、そのようなことは考えません。
バイクのライダーも、同じような景色を見て判断していると考えています。
そこで、バイクのライダーは自車のことを「見えているはず」だと思って横から突っ込んでくることなどがあります。
しかし、バイクには見えていないので、避けることができず事故につながります。
このように、バイクに乗るときには、自動車とは体感が異なることを意識して、相手に過剰な期待をせず、自分で事故を避ける努力を行う必要があります。
7.歩行者や自転車相手の事故にも注意!
バイクに乗車していて注意すべきなのは、自動車との事故だけではありません。
自転車や歩行者を相手に事故を起こすと、バイクはとたんに加害者となります。
バイクで歩行者をはねたら、被害者が死亡したり重傷を負ったりすることも多いですし、その場合には、バイクのライダーに多額の賠償義務が発生してしまいます。
また、自動車運転致死傷罪や危険運転致死傷罪などの犯罪が成立してしまうこともあります。
そこで、バイクを運転しているときには、こうした弱い通行者に対しても、十分な配慮をすることが大切です。
8.バイクが加入しておくべき保険
バイクを運転したり所有したりするときには、必ず保険に加入しなければなりません。
バイクの保険の制度は、基本的には自動車の場合と同じです。
自動車保険には、自賠責保険と任意保険があり、安心してバイクを運転するためには、この両方に加入しておくべきです。
8-1.自賠責保険とは
自賠責保険とは、法律によって加入を義務づけられている保険のことです。
バイクを所有しているなら、必ず自賠責保険に加入しなければならず、加入しないでバイクを運転していたら、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という刑罰も科されます。
そこで、バイクを購入したら、必ず自賠責保険に加入します。
ただ、自賠責保険は、補償内容が小さく限度額も低いです。
まず、人身損害にしか補償がないため、物損事故の場合には保険の支払いを受けられません。
人身事故でも、補償の内容が薄いので、自賠責の限度額を超える損害については、自腹で支払わないといけなくなります。
たとえば、歩行者相手に事故を起こし、相手が大けがをして1億円の損害が発生したとしても、自賠責保険からは3000万円しか出ないので、残り7000万円は自分で支払わないといけなくなります。
8-2.任意保険とは
バイクを運転するなら、自賠責保険だけでは非常に不安があります。
そこで、自賠責保険では足りないところを補うために、任意保険に加入しておく必要があります。
任意保険というのは、東京海上日動や損保ジャパンなどが売っている、いわゆる普通の「バイク保険」のことです。
バイク保険の中でも、「対人賠償責任保険」に加入していたら、被害者に与えた損害を、保険会社が支払ってくれます。
人身損害は非常に高額になることが多いので、対人賠償責任保険は、限度額を無制限にしておきましょう。
対物賠償責任保険に加入していたら、自賠責保険では補填されない物損事故の場合でも、保険会社から支払いを受けることができます。
また、人身傷害補償保険などに加入していると、自分がケガをしたときに、自分のバイク保険から支払いを受けることができるので、助かります。
バイク保険は、セット販売されているので、まとめて加入しておくことをおすすめします。
8-3.弁護士費用特約について
バイク保険には、「弁護士費用特約」をつけることができます。
これは、交通事故に遭ったときにかかる弁護士費用を、保険会社が負担してくれる特約です。
弁護士費用特約を使うと、弁護士の法律相談料や着手金、報酬金などをすべて自動車保険が負担してくれるので、自分では弁護士費用を支払う必要がありません。
交通事故に遭ったら、いろいろと弁護士にアドバイスを受けたいことがあるものですし、事故後の手続きも、自分で対応するより弁護士に依頼した方が有利になることが多いです。
特約をつけても年間の保険料が1300円くらい上がるだけなので、バイク保険に入るときには、必ず弁護士費用特約をつけておきましょう。
8-4.バイクの保険加入率は低い!
ここで1つ、知っておいてほしいことがあります。
それは、バイクは、非常に任意保険の加入率が低いことです。
自動車を運転するときに任意保険に加入していないと大変なことになる、という意識はかなり広がってきており、2014年3月の時点において、加入率は87.3%にもなっているという調査結果があります。
ところがバイク(原付をのぞく)に限ると、加入率は41%程度にまで落ちてしまうのです。
このことは、ライダーが身を守る意識や交通安全に対する意識が低いことを表していると言えます。しかし、保険に入っていなくて困るのは、ライダー自身です。
バイクを運転するのであれば、万一の場合に備えて、バイク保険には必ず加入しておきましょう。
9.バイク事故の過失割合
バイク事故では、過失割合はどのくらいになるのか見てみましょう。
バイクは、自動車よりも立場が弱いです。
交通事故では、基本的に立場が弱いものの過失割合が低くなりますので、バイクの場合、自動車よりも過失割合が下がります。
つまり、バイクと自動車が事故を起こした場合、バイクの過失割合は低めになり、自動車の過失割合は高くなる、ということです。
そこで、自動車を運転しているときには、バイクとぶつかると多額の賠償金を支払わなければなりますし、相手に請求できる金額は低額になります。
バイクの場合は反対で、自分の過失割合が下がるので、示談交渉では有利になります。
しかし、これは、バイクが危険で重大な結果になりやすいから、そのことに配慮して過失割合が下げられているだけです。
バイクは過失割合が低くなるから安心して良い、ということにはなりません。
自動車とバイクが接触したら、自動車は無傷なのにバイクは重傷や死亡、ということも普通にあるのです。
バイクと自動車の事故の過失割合で、典型的なケースを確認しておきましょう。
9-1.信号機のある交差点で、直進車同士の出会い頭の事故
信号の色 | 単車の過失割合 | 自動車の過失割合 |
単車が青、自動車が赤 | 0 | 100 |
単車が赤、自動車が青 | 100 | 0 |
単車が黄色、自動車が赤 | 0 | 90 |
単車が赤、自動車が黄色 | 70 | 30 |
単車が赤、自動車が赤 | 40 | 60 |
9-2.信号機のない交差点で、直進車同士の出会い頭の事故
単車が左方のケース
速度 | 単車の過失割合 | 自動車の過失割合 |
同速度 | 30 | 70 |
単車は減速、自動車は減速せず | 15 | 85 |
単車は減速せず、自動車は減速 | 45 | 55 |
自動車が左方のケース
速度 | 単車の過失割合 | 自動車の過失割合 |
同速度 | 50 | 50 |
単車は減速、自動車は減速せず | 35 | 65 |
単車は減速せず、自動車は減速 | 60 | 40 |
9-3.信号機の設置されている交差点で、右折車と左折車の事故
事故の状況 | 単車の過失割合 | 自動車の過失割合 |
単車が直進、自動車が右折、信号は双方とも青 | 15 | 85 |
単車が右折、自動車が直進、信号は双方とも青 | 60 | 40 |
単車が黄信号で直進、自動車が青信号で右折 | 55 | 45 |
単車が青信号で右折、自動車は黄信号で直進 | 25 | 75 |
単車が直進、自動車が右折で、信号は双方とも黄色 | 30 | 70 |
単車が右折、自動車が直進で、信号は双方とも黄色 | 50 | 50 |
9-4.信号機のある交差点で、同じ道路を対向方向から進入した場合の事故
事故の状況 | 単車の過失割合 | 自動車の過失割合 |
単車が赤信号で直進、自動車が青矢印で右折 | 100 | 0 |
単車が青矢印で右折、自動車が赤信号で直進進入 | 0 | 100 |
単車が赤信号で直進進入、自動車が青信号で進入し、赤信号になって右折 | 70 | 30 |
単車が青信号で進入し、赤信号で右折、自動車が赤信号で直進 | 10 | 90 |
単車が赤信号で直進、自動車が黄色で進入して赤信号で右折 | 50 | 50 |
単車が黄色で進入し、赤信号で右折、自動車が赤信号で直進 | 20 | 80 |
単車が直進、自動車が右折、信号は双方とも赤 | 40 | 60 |
単車が右折、自動車が直進、信号は双方とも赤 | 40 | 60 |
以上を見るとわかりますが、単車と自動車が同じ行動をとっても、単車の方が過失割合が低くなっています。
10.バイク事故の慰謝料
バイク事故では、慰謝料はどのくらいになるのかも、確認しておきましょう。
バイク事故の慰謝料は、基本的に自動車事故の慰謝料と同じです。
そこで、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料、死亡事案の場合には死亡慰謝料が認められます。
10-1.入通院慰謝料
入通院慰謝料は、事故でけがをしたことにより、入通院をしたときに発生する慰謝料です。
たとえば、以下のような金額となります。
通院3ヶ月…73万円
通院6ヶ月…116万円
通院9ヶ月…139万円
入院1ヶ月、通院3ヶ月…115万円
入院1ヶ月、通院6ヶ月…149万円
入院2ヶ月、通院3ヶ月…154万円
入院2ヶ月、通院6ヶ月…181万円
ただし、上記は通常のケガをしたときの基準です。
軽傷の打撲のケースや、軽いむちうちで自覚症状しかないケースでは、請求できる金額が3分の2程度に減額されます。
10-2.後遺障害慰謝料
バイク事故で、後遺障害慰謝料が残ってしまった場合には、後遺障害の内容と程度に応じて後遺障害慰謝料が発生します。
後遺障害には、「等級」というレベルのような制度があります。
そして、等級が高い後遺障害が認定されると、高額な慰謝料を支払ってもらうことができます。
各等級の後遺障害慰謝料の金額は、以下の通りです。
1級 2800万円
2級 2370万円
3級 1990万円
4級 1670万円
5級 1400万円
6級 1180万円
7級 1000万円
8級 830万円
9級 690万円
10級 550万円
11級 420万円
12級 290万円
13級 180万円
14級 110万円
具体例
たとえば、遷延性意識障害(植物状態)になった場合や全身麻痺になって常に介護を要する状態になった場合、両目を失明した場合などには、最も高い等級の1級となり、後遺障害慰謝料は2800万円程度になります。
両眼の視力が0.6以下になったときや片耳の聴力がなくなった場合などは、後遺障害9級となって、後遺障害慰謝料は690万円程度となります。
椎間板ヘルニアなどになった場合には後遺障害12級となって、後遺障害慰謝料は290万円程度となりますし、むちうちの場合などには後遺障害14級となって後遺障害慰謝料は110万円となります。
10-3.死亡慰謝料
バイク事故で、被害者が死亡した場合、死亡慰謝料が発生します。
死亡慰謝料の金額は、被害者に扶養していた家族がいたかどうかや、年齢によって異なります。
具体的には、以下の通りです。
- 被害者が一家の大黒柱…2800万円〜3600万円程度
- 被害者が母親や配偶者…2000万円〜3200万円
- 被害者が独身の男女…2000万円~3000万円程度
- 被害者が高齢者…1800万円〜2400万円程度
- 被害者が子ども…1800万円〜2600万円程度
11.バイク事故に遭ったときに慰謝料を増額する方法
バイク事故に遭ったとき、できるだけ高額な慰謝料を請求するには、どのようにしたらよいのでしょうか?
この場合、弁護士に示談交渉を任せるのがもっとも効果的です。
以下で、その理由をご説明します。
11-1.弁護士基準で計算できる
バイク事故に遭った場合、上記で説明した通りの慰謝料を受けとることができますが、それは、弁護士基準という基準で賠償金を計算した場合です。
交通事故の賠償金の計算基準には、弁護士基準と任意保険基準、自賠責基準という3種類の基準があり、その中でも弁護士基準で計算した場合が最も高額になります。
同じ交通事故でも、弁護士基準で計算すると、他の基準で計算した場合の2倍や3倍以上になることもあります。
ただ、被害者が自分で相手の保険会社と示談交渉をすると、相手の保険会社は、低額な任意保険基準や自賠責基準という基準で計算するので、賠償金の金額を大きく減らされてしまうのです。
そこで、被害者が自分で示談交渉をするなら、上記で説明したような慰謝料をもらうことができません。
弁護士に対応を依頼したら、最も高額な弁護士基準で慰謝料を計算できるので、獲得できる慰謝料の金額が上がります。
11-2.過失割合を下げることができる
バイクで自動車相手に事故に遭った場合、自動車よりも過失割合が低くなることが多いです。
先ほども説明した通り、バイクは自動車よりも立場が弱いから、保護されているためです。
しかし、これについても被害者が自分で示談交渉をしていたら、保障されるものではありません。
相手の保険会社は、被害者相手に示談交渉をするとき、被害者が無知なのを良いことに、基準を無視して高い過失割合を押しつけてくることが多いためです。
バイクで重傷を負ったり死亡したりしても、相手はかまわず被害者に過失が大きかったなどと主張して、不当な過失割合を認定しようとします。
そうなると、大変な後遺障害が残ったり死亡したりしているのに、過失があるなどと言われて慰謝料も低くされるので、被害者は踏んだり蹴ったりの状態になります。
ここで弁護士に示談交渉を依頼すると、適切な過失割合の基準を当てはめて計算することができるので、慰謝料の金額が上がります。
保険会社も、弁護士が相手なら無理な主張をすることはなく、きちんと過失割合の認定基準に従います。
11-3.後遺障害の等級認定を受けやすい
バイク事故の場合、被害者に重大な後遺障害が残りやすいです。
そのとき、適切な慰謝料を支払ってもらうためには、後遺障害の等級認定を受ける必要があります。
ところが、被害者が自分で後遺障害の認定の手続きをしようとしても、うまくいかないことが多いです。
実際には後遺障害が残っていても認定してもらえないことがありますし、本来よりも低い等級にされてしまうケースもあります。
ここで弁護士に示談交渉を依頼していたら、弁護士が適切に後遺障害等級認定の手続きを進めてくれるので、より高い等級の後遺障害認定を受けられる可能性が高くなります。
そこで、後遺障害慰謝料も高額になります。
まとめ
今回は、バイク事故について、いろいろな側面から解説しました。
バイク事故が起こると、重傷になる可能性や死亡する可能性が高くなるので、事故を起こさないよう慎重に運転する必要があります。
必ずヘルメットを装着し、安全運転を心がけましょう。
万一事故に遭ってしまったときには、弁護士に示談交渉を依頼して、弁護士基準を適用することにより、高額な慰謝料を支払ってもらいましょう。
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