交通事故の基礎知識 PR

交通事故で重要なポイント「症状固定」とは?

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医師と患者
交通事故被害に遭って怪我をしたら、病院で治療を続ける必要があります。
その治療期間は、いつまでになるのか、ご存知でしょうか?
「治るまでなんじゃないの?」と思うかもしれませんが、そう簡単なものでもないのです。
治療は「症状固定」するまで続けなければなりません。
症状固定は、交通事故の損害賠償のキーポイントとなる重要な時点です。
今回は、交通事故で重要なポイントである「症状固定」について、解説します。

1.症状固定とは

交通事故で相手に対して賠償金の請求をするとき、「症状固定」が重要です。
症状固定とは、それ以上治療をしても、治療効果が上がらなくなった状態です。
つまり、症状が固まってしまい、それ以上改善しなくなってしまったことです。
そこで、症状固定した時点で残っている症状は、後遺症となります。
反対に言うと、症状固定する前であれば、症状は改善して完治する可能性もあるので、後遺症にはなりません。
交通事故の損害賠償請求をするときには、この「症状固定」が非常に重要なポイントとなります。
症状固定前と後では、発生する損害の種類や計算方法が変わってくるからです。
 

2.症状固定の前に発生する損害

それでは、症状固定前にはどのような損害が発生するのでしょうか?
この場合、治療費や付添看護費、入院雑費、通院交通費、介護料、休業損害、入通院慰謝料が発生します。以下で、それぞれについて簡単に見ていきましょう。

  • 治療費

治療費は、病院で治療を受ける際にかかる費用です。
診察代や検査費用、投薬料などすべて含まれます。
実費で請求することができます。

  • 付添看護、介護費

付添看護費用とは、入院や通院において、看護や介護をしてもらったときに発生する費用です。職業看護人(介護人)に付き添ってもらったときにはその実費で計算します。
近親者に付き添ってもらった場合、入院付添費は1日あたり6500円、通院付添費は1日あたり3300円程度となります。

  • 入院雑費

入院すると、身の回りのさまざまな物などが必要になるので、雑費が発生します。
入院雑費は、入院1日あたり1500円となります。

  • 通院交通費

通院するとき、電車やバス、タクシーなどの交通機関を利用することがあります。
その際の通院交通費も相手に支払い請求することができます。
金額は、かかった実費です。

  • 休業損害

事故によってケガをすると、働けない期間が発生することが多いです。
すると、本来なら働いて得られたはずの収入を得られなくなってしまいます。
それが、休業損害です。
事故前の収入の金額を基礎として、入院していた日数や通院日数、自宅療養が必要となった日数などの休業日数をかけ算することで算出します。

  • 入通院慰謝料

入通院慰謝料は、ケガをして入通院が必要になったことに対する慰謝料です。
ケガをすると、大きな精神的苦痛を被ることから発生します。
入通院慰謝料は、入通院の期間(治療期間)に応じて加算されていくので、入通院期間が長くなればなるほど、高額になります。
しかし、症状固定すると治療が終了するので、それ以後については、入通院慰謝料が発生しなくなります。
 

3.症状固定後に計算する損害

計算機とペン
次に、症状固定後に発生する損害にどのようなものがあるのか、ご紹介します。

  • 後遺障害慰謝料

症状固定すると、そのときに残っている症状はもはや改善する可能性がないので「後遺症」となります。
そこで、その後遺症の内容により、交通事故の後遺障害の認定を受けることができます。
後遺障害が認定されると、後遺障害の内容や程度に応じた後遺障害慰謝料が支払われます。
後遺障害慰謝料とは、交通事故によって被害者に後遺障害が残ってしまったことにより、被害者が受ける精神的苦痛に対する慰謝料です。
後遺障害の「等級」によって、金額が変わります。
後遺障害の等級とは、後遺障害の程度に応じたレベルのようなものですが、後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害の等級が上がると、より高額になります。
このような後遺障害慰謝料は、症状固定後でないと計算できません。

  • 後遺障害逸失利益

交通事故によって後遺障害が残ってしまったら、「後遺障害逸失利益」が発生します。
後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残ってしまったことにより、将来にわたって得られなくなってしまった収入のことです。
後遺障害が残ると、その分身体能力や精神的な能力が低下します。
すると、その分仕事でパフォーマンスを上げることができなくなり、効率よく働くことが難しくなります。
事故前と同じ仕事はできなくなってしまうかもしれませんし、転職するとしても、再就職が難しくなることもあります。
つまり、事故に遭うと、事故がなかったら得られたはずの収入を得られなくなってしまうのです。
そのような「将来の失われた収入」のことを、逸失利益と言います。
実は、逸失利益は死亡した場合にも発生するので、その場合の「死亡逸失利益」と区別して、後遺障害の逸失利益のことを「後遺障害逸失利益」と言います。
後遺障害逸失利益も、症状固定後に後遺障害の認定を受けて始めて発生するものなので、症状固定後に計算できる損害の1種です。

  • 将来介護費用

事故によって重大な後遺障害が残ってしまった場合には、生涯にわたって介護が必要になるケースがあります。
たとえば、脊髄損傷で身体に麻痺が残ってしまった場合、高次脳機能障害で日常生活に必要な行為がほとんどできなくなった場合、植物状態になってしまった場合などには、誰かが介護し続けないと、被害者が生きていくことができません。
この場合、当然介護費用がかかるので、将来介護費用を加害者に請求することができます。
職業介護人を雇うときにはその相場の金額(1日あたり1~2万円程度)で計算しますが、近親者が介護を行うときには1日あたり8000円程度で計算します。
 
以上のように、症状固定後に発生する損害は、主に後遺障害に関する費用です。
交通事故に遭っても、後遺障害が残らなかった場合には、症状固定後の損害を相手に請求することができません。
 

4.死亡事故と症状固定

症状固定前に発生する損害も、症状固定後に発生する損害も、被害者が生きていることを前提とした損害です。
死亡事故の場合、症状固定はまったく問題にならないのでしょうか?
死亡事故には、即死の事案としばらく治療を続けてから死亡する事案があります。
この2つにより、症状固定との関係も異なってきます。

4-1.即死事案の場合

即死の場合には、症状固定はほとんど関係ありません。
治療を受けるまもなく死亡するので、治療費やその他の費用も発生しないためです。
この場合発生するのは葬儀費用と死亡慰謝料、死亡逸失利益です。
以下で、それぞれについて見てみましょう。

  • 葬儀費用

葬儀にかかる費用です。
具体的には、お花代、弔問客への食事代、葬儀社に支払った費用、
お布施や読経、戒名料、火葬費用が対象です。
墓石代や墓地費用が認められることもありますが、全体として150万円程度が基本的な限度額となります。遺体搬送費用については、別途実費が認められるケースもあります。
これに対し、香典返しや被害者の遺族以外の関係者の交通費、引出物代や49日を超えた法要の費用は、賠償の対象になりません。

  • 死亡慰謝料

被害者が死亡すると、死亡慰謝料が発生します。
被害者は、死亡と同時に強い精神的苦痛を受け、それがそのまま相続人に相続されると考えられるからです。

  • 死亡逸失利益

死亡すると、被害者は当然、その後働けなくなります。
そこで、後遺障害のケースと同様、逸失利益が発生します。
この逸失利益のことを、死亡逸失利益と言います。

4-2.事故後治療を続けた後死亡した場合

被害者が即死せず、事故後しばらく治療を続けたけれども、甲斐なく死亡するケースがあります。
その場合、どのような損害が発生するのでしょうか?
この場合、「症状固定前に発生する損害」で紹介した損害と、「即死事案の場合」で紹介した損害の両方が発生します。
つまり、死亡前は通常、状態がどんどん悪化して行っている状態です(小康状態などはあるかもしれませんが)。
そこで、いわば「症状固定前」です。よって、そのときに発生する治療費や入院付添費用、休業損害などを請求することができます。
また、死亡によって発生する葬儀費用や死亡慰謝料、死亡逸失利益についても、当然請求できます。

4-3.症状固定後に死亡した場合

上記は、どちらのケースも「症状固定前に死亡したケース」です。
症状固定後に死亡した場合には、どのようにして損害を計算するのでしょうか?
この場合、基本的に「死亡事故」にはなりません。
「症状固定」したということは、その時点で症状が固まったということです。
その後悪化して亡くなる可能性があるなら、「症状固定」したことにはならないのです。
そこで、症状固定後に死亡したということは、交通事故のケガや後遺症とは無関係な原因で死亡したということになります。
症状固定後に死亡した場合、相手に請求できるのは、通常の後遺障害が残った事故と同様、症状固定前の治療費、休業損害、入通院慰謝料などと、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益です。
事故と死亡との間に因果関係が認められないため、葬儀費用や死亡慰謝料、死亡逸失利益が認められることはありません。

4-4.症状固定後に死亡した場合の後遺障害逸失利益と将来介護費用は?

症状固定後に死亡した場合、すでに認められている後遺障害逸失利益や将来介護費用がどうなるのかも問題です。

後遺障害逸失利益について

後遺障害逸失利益は、後遺障害が残ったために働けなくなることが理由で発生するものです。
とすれば、事故後に交通事故とは無関係な原因で死亡した場合、死亡時以降はどちらにしても働けなくなることになるため、それ以降は後遺障害逸失利益が発生しないのではないか?と思われるのです。
ひと言で言うと、「死亡後の逸失利益は、どっちにしても期待できないのだから、後遺障害とは無関係ではないか?」、ということです。
これについて、裁判所は、「死亡後の分も逸失利益を認める」考え方を採用しています。
後遺障害逸失利益は、交通事故発生時にすでに抽象的に発生しているものであり、事故後に死亡するかどうかによる影響を受けないからという理由です。
そこで、症状固定後に死亡したとしても、そのことによって後遺障害逸失利益を減額されることはなく、就労可能年齢(67歳)までの全額の請求を行うことができます。

将来介護費用について

同じように、「将来介護費用」も問題となります。
将来介護費用については、平均余命を使って生涯の分が認められます。
ところが、症状固定後に死亡したら、それ以後については介護が不要になります。
そこで、「死亡後の分については将来介護費用が発生しないのではないか?」が問題となります。
先ほどの、後遺障害逸失利益と同じ考え方なのであれば、将来介護費用についても、生涯にわたる分が認められそうです。
しかし、裁判所は、将来介護費用については、死亡後の分を認めません。
将来介護費用は、遺族が実際に負担するから発生する費用であるところ、被害者が死亡したら実際に支出することがないのだから、発生させる根拠がないとするのです。
そこで、要介護の後遺障害が残った被害者が、症状固定後に交通事故と別原因で死亡した場合、その時点から後の介護費用を相手に請求することはできません。
示談前に死亡してしまった場合には、将来介護費用を減額されることになってしまいます。
 

5.症状固定の重要性

重要ポイント説明
交通事故では、症状固定時が非常に重要です。
ただ、その意味合いは、事故の種類ごとに異なります。
以下では、後遺障害が残らなかった場合と残った場合に分けて、症状固定の重要性をご説明します。

5-1.後遺障害が残らなかった事案と症状固定

まずは、後遺障害が残らなかった事案における症状固定の重要性を確認しましょう。
後遺障害がない場合、相手に請求できる損害は、治療費や入院付添費、入院雑費、通院付添費、休業損害など、症状固定前に発生するものがすべてです。
そこで、症状固定してしまうと、一切の損害賠償をすることができなくなります。
後遺障害が残らない場合、症状固定の時期が早まれば早まるほど、相手に請求できる賠償金の金額が減額されてしまいます。
そこでこの場合になるべく高額な賠償金の請求をするためには、なるべく「長く」「確実に症状固定するまで」通院を続けることが必要です。

5-2.後遺障害が残った事案と症状固定

次に、後遺障害が残った事案における症状固定の重要性を確認しましょう。
この場合にも、症状固定するまでの期間が長くなればなるほど入通院慰謝料等の賠償金が高額になるので、できるだけ長い期間、確実に通院治療を継続することが必要です。この点は、後遺障害なしの事案と同じです。
ただ、後遺障害が残る事案においては、後遺障害の等級認定の手続きが非常に重要です。後遺症が残っても、後遺障害の等級認定を受けないと、高額な後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益の支払いを受けることができないためです。
後遺障害等級認定を成功させるためには、良い医師にかかり、適切な内容の後遺障害診断書を作成してもらい、被害者請求という方法で、上手に申請の手続をすすめる必要があります。
なるべく高額な慰謝料や逸失利益の支払いを受けるためには、良い弁護士に相談をして、確実に高い等級の後遺障害認定を受ける必要があります。

5-3.治療中に別原因で死亡したケース

交通事故で重傷を負い、リハビリなどの治療を継続している最中に、事故とは別の原因で死亡してしまうケースがあります。
まだ症状固定していない状態であったなら、後遺障害認定を受けていないため、相手に対して後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができません。
本来なら、要介護の後遺障害が認められて高額な後遺障害慰謝料や逸失利益を受けとることができるはずだったのに、死亡してしまったために一切受けとれなくなるのは、不合理なのではないか?
という問題が発生します。
こういったケースでは、原則として、後遺障害の認定を受けていない以上、後遺障害慰謝料や逸失利益を計算できません。
しかし、事故後の治療期間やリハビリ期間が相当長くなっており、死亡が突然で予測できなかったようなケースでは、死亡時を症状固定時として、後遺障害を前提とした賠償金が認められることがあります。
たとえば、交通事故から1年半が経過し、リハビリ中に死亡した被害者のケースがあります。
この事案では、被害者の遺族は、もともと保険会社と交渉をしていて、入通院慰謝料の334万円程度の支払いしかしないと言われていました。
そこで、弁護士に依頼したところ、後遺障害が認められて賠償金額が約1億円にアップしました。
また、同じく治療中に死亡してしまったので交渉外等級認定を受けられていなかったのですが、死亡時を症状固定日とすることにより、2級の後遺障害が認定された事案があります。このケースでは、約8000万円の賠償金が支払われました。
もし後遺障害が認められなかったなら、数百万円の入通院慰謝料などしか認められないので、天と地ほどの違いがあります。

6.症状固定は、誰が判断するのか?

以上のように、症状固定はどのような交通事故の場合でも非常に重要です。
それでは、誰がどのようにして症状固定したかどうかを決定するのでしょうか?
症状固定は、病院の担当医師が認定します。
考えてみたらわかることですが、症状固定は、「それ以上治療しても良くならない状態」です。
このような医学的なことは、医学のプロである医師にしか判断できないことが明らかです。そして、最も適切な判断者は、日頃から病状を診てくれている担当医師です。
そこで症状固定したかどうかは、医師が判断してくれます。
治療期間が長くなってきたら、医師の方から「そろそろ症状固定かもしれませんね」と言ってくれることもあります。
患者の方から「いつ頃症状固定する予定ですか?」と質問をすると、多くの医師は、「だいたい〇ヶ月くらいです」「まだ、ちょっとわからないです」など、目安を答えてくれます。
そこで、症状固定時期については、医師としっかりコミュニケーションをとりながら認定してもらうことが重要です。

7.相手の保険会社が主張する「症状固定」とは?

症状固定は、医師が判断するものです。しかし、実際には、医師が症状固定したという前に、相手の保険会社が「そろそろ症状固定です」「症状固定しましょう」「治療を終わりましょう」などと言って、あたかも「症状固定した」ことを前提としたような連絡をしてくることがあります。
この場合、本当に症状固定したと考えて良いのでしょうか?相手の保険会社は、何らかの根拠をもって「症状固定」したと主張しているのでしょうか?
答えは、どちらも「NO」です。
相手の保険会社が症状固定したと言っているとき、たいていは「ケガの内容からして、治療期間が長引いているから」程度の理由です。
たとえば、打撲なら1ヶ月、むちうちなら3ヶ月、骨折なら6ヶ月くらいしたら、「症状固定するはずだ」と決めつけて、被害者に連絡をしてきています。
相手の保険会社が、被害者の通院先の病院の医師に連絡をして相談をしたり、資料を精査したりして、症状固定を判断しているのではありません。
そこで、保険会社が「症状固定した」と主張してきたときに、病院の担当医師に「本当に症状固定しているのでしょうか?」と尋ねると「まだです」と言われることは普通にあります。
このように、医師が症状固定していないと判断しているのに、相手の保険会社の勝手な言い分に従って症状固定にしてしまう必要はまったくありませんし、そのような対応をしてはいけません。
 

8.相手の保険会社が「症状固定」を急ぐのはなぜ?

被害者にとって非常に重要な症状固定の時期について、相手の保険会社が勝手に決めつけて、押しつけてくるのはどうしてなのでしょうか?
それは、相手の保険会社が「支払う賠償金を値切りたいから」です。
保険会社は、営利目的の企業ですから、なるべく支払う賠償金を少なくした方が、利益が大きくなります。
そこで、あらゆる手を使って被害者に対する賠償金を減額しようとします。
その一環として、早く治療を打ち切らせて、発生する治療費や入通院慰謝料などを減額しようとするのです。
相手の保険会社が「そろそろ症状固定しましょう」と言ってきて、被害者が承諾してしまったら、たとえ「医学的には症状固定していなくても」その時点を「症状固定」とされてしまい、そのときまでの治療費や慰謝料しか請求できなくなります。
本来なら6ヶ月の通院が必要で入通院慰謝料が116万円になるケースでも、相手の保険会社が3ヶ月目で「症状固定」と言ってきたのでそれに妥協すると、入通院慰謝料は73万円になってしまいます。
相手の保険会社は、自社の利益のことだけ考えているのであり、被害者のことなど全く考えていないので、そのような保険会社の言い分を決して受け入れてはいけません。
 

9.保険会社が主張する「症状固定」を受け入れる問題点

保険会社が、実際よりも早い「症状固定」を主張するとき、それを受け入れてしまったらどのような問題があるのでしょうか?
以下で、順番に見ていきましょう。

9-1.十分な治療を受けられない

まずは、十分な治療を受けられないことが問題です。
事故でけがをしたら、可能な限り、元通りの状態に戻すべきです。
そのためには、きちんと最後まで治療を受け続けることが必要です。
しかし、症状固定前に治療を打ち切ると、十分な治療を受けられないので、元に戻るものも戻らなくなってしまいます。
結果として、痛みやその他の症状を我慢しながら生活しなければならないのですから、大きなデメリットがあることが明らかです。

9-2.症状固定後の治療費を請求できない

症状固定してしまうと、その後は治療費を請求できなくなります。
しかし、保険会社に従って無理矢理症状固定してしまった場合には、「やっぱりどうしても具合が悪い」と思って、通院治療を受けることもあるでしょう。
そのとき、保険会社との間でいったん「症状固定」と決めてしまったら、その分の治療費を支払ってもらうことができません。
もし、早く症状固定することがなければ、必要な治療費についてはすべて支払いを受けることができたはずです。
症状固定を急がせると、その後にかかった治療費が自腹になってしまうので、大きなデメリットがあります

9-3.入通院慰謝料を減額される

症状固定を急ぐと、その分入通院治療費を下げられてしまいます。
入通院慰謝料は、入通院期間に応じて支払われるものだからです。
先ほどの説明の通り、相手の保険会社が症状固定を急ぐ主な理由の1つは、入通院慰謝料を減額するためです。
このようなことは、被害者にとっては不利益にしかなりません。

9-4.後遺障害の認定を受けられない

後遺障害の認定を受けるためには、きちんと症状固定するまで治療を継続し、医師に「後遺障害診断書」を作成してもらう必要があります。
この場合の症状固定は、もちろん医学的な意味の適正な「症状固定」です。
医師が判断するものです。
ところが、相手の保険会社に従って、無理矢理早く「症状固定」してしまった場合、そのときに残っている症状が後遺症と言えない可能性があります。
また、後遺障害の等級認定を受けるためには、最低でも交通事故後6ヶ月が経過している必要があります。
ところが、相手の保険会社は、6ヶ月未満でも平気で「治療は終わりです」「完治しています」などと言ってきます。
このような言葉に従っていると、後遺障害認定を受けることもできなくなり、大きく賠償金を減らされてしまう不利益があります。

10.保険会社が症状固定を押しつけてきたときの正しい対処方法

以上のように、保険会社が早期の「症状固定」を押しつけてきたとき、これを受け入れてしまったら、大きな不利益が及びます。
保険会社が「症状固定です。
治療は終わりです。治療費をこれ以上支払うことはできません。」などと強固に主張してきたら、どのように対処したら良いのでしょうか?
まずは、病院の担当医師に相談しましょう。
そして、実際に症状固定しているかどうかを尋ねます。
まだだということであれば、いつまでかかりそうか、確認しましょう。
そして、症状固定の見込みについて記載した診断書を作成してもらいます。
それを、相手の保険会社に提出し、まだ症状固定していないから、治療を続ける必要があることを説明しましょう。
それでも相手が応じず、無理矢理治療費の支払いを打ちきってきたとしても、決して「症状固定」を受け入れてはいけません。
あくまで症状固定していないことを前提に、通院治療を継続しましょう。
相手が治療費を支払わないなら、健康保険を使って通院することができます。
自分では対応方法がわからず不安な場合には、弁護士に相談すると、心強い味方となってくれるので、お勧めです。
 

まとめ

今回は、交通事故で重要な「症状固定」について、解説しました。
症状固定は、その前とその後において、発生する損害の種類や計算方法が異なるという、非常に重要なタイミングです。
症状固定したかどうかは、病院の医師が判断します。
相手の保険会社が「症状固定した」と主張してきても、受け入れることなくきちんと医師に確認して、最後まで通院を継続しましょう。
自分で正しい対応方法がわからない場合や不安な場合には、交通事故問題に強い弁護士に相談すると良いでしょう。