交通事故の対処方法 PR

遷延性意識障害|被害者が意識不明で相手と示談交渉ができない場合の対処方法

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交通事故では、被害者が意識不明の重体になってしまうこともあります。
そのまま意識が回復せず、植物状態(遷延性意識障害)になってしまったら、どのくらいの損害賠償金の支払いを受けられるのでしょうか?
本人が意識不明で対応できないので、どのようにして示談交渉を進めていったら良いのかも問題です。
今回は、被害者が意識不明で、自分では相手と示談交渉をすることができない場合の対処方法を解説します。
 

1.遷延性意識障害について

1-1.遷延性意識障害とは

交通事故によって脳に酷い損傷を受けると、その後意識が回復せず、いわゆる「植物状態」になってしまうことがあります。
このような、植物状態の症状のことを「遷延性意識障害」と言います。
遷延性意識障害とは、大脳の機能のすべてやほとんどが失われてしまい、意識が回復しなくなった状態のことです。
脳死とは、似ていますが異なります。脳死という場合、大脳だけではなく小脳や脳幹も機能を喪失した状態(全脳死)や脳幹部分の機能も失われた状態(脳幹死)ですが、遷延性意識障害の場合には、小脳や脳幹は機能しているためです。
 

1-2.遷延性意識障害の判断基準

それでは、遷延性意識障害になったかどうかについては、どのようにして判断されているのでしょうか?
日本脳外科学会によると、以下の6項目を満たす状態になった後、治療をしても改善が見られないまま3ヶ月以上が継続した場合を言います。
 

  • 自力移動が不可能
  • 自力で摂食が不可能
  • 屎尿失禁状態
  • 眼球ではかろうじて物を追うことがあるけれども、見たものを認識できない
  • 声を出すことはあっても、意味を持った発言が全く不可能
  • 目を開くとか手を握るなど、簡単な命令にはかろうじて反応することがあっても、それ以上の意思疎通が不可能

 
そこで、交通事故後、病院に運ばれて上記のような症状が定着してしまったら遷延性意識障害と判断される可能性が高いです。

1-3.遷延性意識障害の原因

遷延性意識障害の原因は、大きく分けて外傷性のものと非外傷性のものがあります。
外傷性のものの代表が交通事故です。
それ以外には、銃創(銃で頭を撃たれた場合)の場合にも、遷延性意識障害になる可能性があります。
また、非外傷性のものとしては、以下のようなものがあります。

  • 低酸素脳症
  • 脳出血、くも膜下出血や脳梗塞などの脳血管障害
  • 細菌性髄膜炎やウイルス性脳炎などの中枢神経感染症
  • 脳腫瘍
  • 一酸化炭素中毒や農薬中毒などの中毒毒性脳障害

現在、遷延性意識障害の約半数は、交通事故が原因で起こっていると言われています。
 

1-4.遷延性意識障害の治療方法

日常的な感覚刺激

遷延性意識障害は、非常に対処が難しい症状で、治療法も確立されていません。
ただ、遷延性意識障害の場合、脳死とは違って小脳や脳幹が生きているので、大脳の機能さえ回復できたら、遷延性意識障害を改善することができるはずです。
そこで「視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚」の五感を通じて大脳を刺激し、その機能を回復させることで、治療を試みることがあります。
たとえば、日頃から、足や腕のストレッチをさせたり、昔好きだった音楽を流したり、以前によく見ていたテレビ番組をつけたり、好きだった香りを嗅がせたり、食べ物や飲み物を少し口に含ませたりすることなどがあります。
また、声をかけながら介護を行ったり、できるだけカーテンを開けて、太陽の光に当てたりすることもあります。
 

脊髄後索電気刺激

こういった日常の介護における治療以外に、医学的な治療方法を試みるケースもあります。
代表的な方法は、脊髄後索電気刺激です。
これは、電気刺激を行う器具を首の後ろに埋め込んで、頸椎に対し、電気的な刺激を与えることによって行う治療方法です。
頸椎には脊髄があるので、ここに電気的な刺激を与えることにより、刺激を脳に送って大脳を活性化させようとしています。
 
ただ、脊髄後索電気刺激による治療方法を使っても、有効になるケースは半数程度です。
また、保険の適用がないため、百万円単位の高額な費用がかかりますし、手術後の薬代やメンテナンス費用もかさんでしまいます。
手術を扱っている病院の数も非常に少なく、見つけるのが難しいですし、患者を移動させるのも大変な作業となります。
 

鍼灸治療

他には、鍼灸治療を施すケースもあります。
鍼灸治療では、人間の経穴(つぼ)を刺激することによって、さまざまな効果を目指します。遷延性意識障害の場合、脊髄のつぼを押すことがメインとなりますが、手足や耳に関するつぼを刺激することで、効果を目指すケースもあります。

1-5.遷延性意識障害からの回復可能性

それでは、遷延性意識障害になったとき、回復できる可能性はどのくらいあるのでしょうか?
現在の医学によると、確実な治療方法は存在せず、上記のような対処や症状を悪化させないための対処、たとえば誤嚥を防いだり床ずれを防止したり、関節拘縮(関節が固まってしまうこと)を防止したりするための措置が中心です。
数字で言うと、回復できるのは、全体の約5%程度と言われています。
回復と言っても、完全に元に戻るというわけではなく、「はい」や「いいえ」などの単純な意思表示ができるようなる場合もあります。
良好なケースでは、患者が自力でベッドから起き上がって行動することができるほどに回復することもあります。
事故時に年齢が若かった人の場合、回復効果が出やすいです。
 

2.遷延性意識障害の場合に認められる損害

交通事故で被害者が遷延性意識障害になってしまった場合、どのような損害が認められるのでしょうか?以下で、順番に見ていきましょう。

2-1.治療費、入院付添費用、入院雑費等の積極損害


まず、治療費や入院付添費用、入院雑費などの積極損害が認められます。
遷延性意識障害でも、症状固定するまでの間に治療が必要になりますし、その間入院付添費用や入院雑費も発生するからです。
また、親族が病院に通ったときにかかった交通費なども損害として認められます。

2-2.休業損害

症状固定までの間に働けない期間が発生したら、その分の休業損害も認められます。親族が仕事を休んで付添を行った場合には、休業損害の金額が6600円(入院付添費用の相場)より高い場合、急漁村外の金額が認められます。
ただし、職業看護人を雇った場合の実費相場を超えることはできません。
親族が付き添うことによって職業看護人以上の費用が発生するのであれば、付添看護はプロに任せて、その親族は仕事に行った方が良いと考えられるためです。
ただしこれにも例外があり、重傷を負った子どものために親が付添看護をする場合のように、親族による看護が特に必要な場合には、その親族の休業損害が認められるケースもあります。
 

2-3.入通院慰謝料

遷延性意識障害の患者が症状固定するまでの入院日数については、入通院慰謝料の計算対象となります。

2-4.後遺障害慰謝料

遷延性意識障害になったら、自分では日常に必要な動作を何もできなくなってしまうのですから、非常に重い後遺症と言えます。
そこで、遷延性意識障害の後遺症が残ると、後遺障害1級の等級認定を受けることになります。
その場合、後遺障害慰謝料の金額は、2800万円となります。
ただし、この金額は弁護士基準で計算したもので、任意保険基準なら1300万円、自賠責基準なら1100万円程度にしかなりません。
意識が回復しないという遷延性意識障害の症状に対する慰謝料としては、あまりに低い金額と言えます。

2-5.後遺障害逸失利益

後遺障害が残ったら、その程度や内容に応じて「逸失利益」が認められます。
逸失利益とは、後遺障害が残ったことにより、将来にわたって得られなくなってしまった収入のことです。基本的に、事故前に働いて収入を得ていた人や主婦、学生、子どもなどの場合に逸失利益を請求することができます。
 

後遺障害逸失利益の計算式

後遺障害逸失利益は、以下の通りの計算式によって計算します。

  • 事故前の基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

労働能力喪失率について

遷延性意識障害の場合、完全に労働能力を失っていることは明らかですから、労働能力喪失率は100%です。

ライプニッツ係数について

ライプニッツ係数というのは、中間利息を控除するための特殊な係数です。
中間利息というのは、将来に受けとるはずのお金を先に一括して受けとることによって発生する利息のことです。
治療費は、本来であれば、その都度支払っていくものですから、相手からはその都度受けとって支払をすべきです。
しかし、将来治療費として支払いを受ける場合、その都度ではなく先に一括して支払いを受けることになります。
すると、本来受けとるまでの期間に運用をして利益を出すことが可能となるので、その運用利益を控除する必要があります。
それが、中間利息控除です。
その中間利息を控除するために、就労可能年齢(原則67歳)までの就労可能年数に対応するライプニッツ係数をかけ算して、適切な数値に調整を行うのです。

生活費控除について

遷延性意識障害によって加害者の保険会社に後遺障害逸失利益を請求すると「生活費控除を行うべき」であると主張されるケースがあります。
生活費控除とは、通常死亡事故の場合に、死亡後の生活費が不要になることから、損害額を減額するための考え方です。
死亡した場合には、当然働けなくなって収入が入ってこなくなるので、逸失利益の請求ができます。
この場合の逸失利益のことを、死亡逸失利益と言います。
ただ、死亡事案の場合、後遺障害の事案とは異なり、死亡した人は生活費がまったくかからなくなります。
そこで、その分を逸失利益から減額するため、生活費控除を行うのです。
生活費控除を行うときには、「生活費控除率」という割合を使って計算します。
被害者の立場によって、30%~50%程度の生活費控除率が適用されます。
 
遷延性意識障害の場合、被害者は死亡していませんが、寝ているだけなので、普通の人よりは生活費がかからないだろうと言われるのです。
そこで、遷延性意識障害のケースで後遺障害逸失利益を請求すると、被害者が存命であるにもかかわらず、相手の保険会社は「生活費控除を行うべきだ」と主張してくることがあります。
このような主張は、存命の患者に対して非常に失礼なことですし、許されるものではありません。
実際、多くの裁判において、遷延性意識障害のケースにおける生活費控除は否定されています。
そこで、保険会社との示談交渉中に、保険会社が生活費控除の主張をしてきた場合には、受け入れることなく、判例等を用いて適切に反論を行う必要があります。

2-6.将来治療費

通常、治療費は症状固定までの分しか認められないのが原則です。
しかし遷延性意識障害のケースでは、将来治療費が認められる可能性が高いです。
遷延性意識障害の場合、症状固定後も治療を受け続ける必要があるケースが多いからです。
将来治療費が認められるためには、基本的に、症状の内容や程度、治療方法などから、現状を維持して症状の悪化を食い止めるために治療が不可欠であることが必要です。
ただ、これに足して予想される手術代などが認められる例もあります。
また、治療費だけではなく、入院雑費や付添看護費用、交通費などについても将来分を認めてもらえるケースがあります。
将来の手術料などを認めてもらうためには、医師が作成する証明書などによって、将来の支出が必要であることと、費用支出が確実であることを証明しなければなりません。
また、「将来治療費」の支払を受けるときには、治療費の支払われる期間に応じて「中間利息」を控除されます。
 

2-7.将来介護費用

遷延性意識障害は、「要介護」の後遺障害です。
植物状態になると、患者は自力では日常生活に必要な動作を、何一つすることができなくなります。
そこで、生活面において、全面的な介護が必要です。
それは、患者が亡くなるまで一生必要となるので、その分の将来介護費用を請求することができるのです。
将来介護費用については、平均余命までの分の支払いを受けることができます。
計算式は、以下の通りです。
 

  • 1年あたりの介護費用×症状固定時における平均余命に対応するライプニッツ係数

 
将来介護費用についても、将来の分を先に受けとることになるため、ライプニッツ係数によって中間利息を控除する必要があります。

介護費用について

1年あたりの介護費用については、誰が介護を行うのかによって金額が変わります。
近親者が介護を行う場合には、日額8000円の計算となります。
これに対し、職業介護人がつく場合には、実費計算となるので、1万円~2万円程度の金額になることが多いです。
そこで、近親者が介護をするケースよりも職業付添人が介護をするケースの方が、介護費用は高額になります。
また、近親者による介護と職業介護人による介護は、二者択一ではありません。
近親者が67歳になるまで(就労可能年齢まで)は近親者が介護を行う前提とし、その後は職業介護人を雇う前提で将来介護費用の計算をすることなどもあります。
 

自宅介護か施設介護か


遷延性意識障害で患者の介護を行うとき、その場所としては自宅か施設かを選ぶ必要があります。
自宅介護の場合、施設介護よりも高額な将来介護費用を認めてもらえることが多いです。
施設介護の場合には5千万円程度になることが多いのですが、自宅介護の場合にはその2倍程度である1億円程度になることが多くなってきます。
それは、自宅介護の場合、介護のための自宅改装費用等も認められることや、自宅介護の方が介護に関わる人が多いために介護費用自身も高額になりやすいことなどが原因です。

自宅介護が認められるための要件

自宅介護は施設介護より非常に高額になるため、保険会社は簡単に認めることがありません。
また、裁判を起こしても、必ずしも認めてもらえるとは限りません。自宅介護を認めてもらうためには、在宅介護を実現できる蓋然性の要件が必要となります。
具体的には、以下のような点が、ポイントです。
まずは、患者の容体が、施設入所している方が適切な状態ではないことが必要です。
たとえば、いつ容態が急変するかわからない状態や、24時間つきっきりの介護が必要な場合には、自宅介護では対応が難しくなるため、施設介護の方が適当であると判断されます。
また、自宅介護を行うには、自宅が介護に適した建物である必要があります。たとえば賃貸物件の場合には、そもそも改装が不可能なので自宅介護はできませんし、家屋が古すぎて改装に堪えない場合や改装に費用がかかりすぎるケースなどでは自宅介護は認められないでしょう。
また、家族に介護するだけの資質があることも必要です。たとえば高齢の親が1人で対応しようとしている場合や介護技術の習得を一切使用としていないケースなどでは、自宅介護を認めてもらいにくいです。
病院との連携も重要です。自宅介護を行うに際しても、定期的に検診を受ける必要がありますし、緊急時には入院も必要です。そういったときに、すぐに対応してもらえる医療機関がないと、不安が大きいので自宅介護は認められません。
他にも、介護保険や行政サービスの利用計画書を作成したり、患者名義の資産を安全に運用するための運用計画書を作成したりして、多岐にわたる対応が必要となります。

2-8.定期金賠償について

遷延性意識障害になり、将来治療費や将来入院雑費、将来介護費等を請求するとき、保険会社からは「定期金賠償」を主張されることがあります。
定期金賠償とは、これらの将来発生する費用について、発生する都度、定期的に支払っていく賠償方法です。
平均余命に至る前に患者が死亡する可能性などもあるので、当初に一括払いする方法では不都合があるとして定期金賠償を提案されます。

定期金賠償のメリット

被害者にとって、定期金賠償は、デメリットばかりとは限りません。
当初一括払いの場合には、中間利息が控除されるので、受取金額が減額されることになりますが、定期金賠償の場合には、それがないため、平均余命まで生きた場合には、受取金額自体は高額になる可能性があるためです。

定期金賠償のデメリット

しかし、定期金賠償にはデメリットが多いです。
まず、賠償金を受けとり続ける限り、一生相手の保険会社とのつきあいが続いてしまいます。
事故のことを忘れたいと思っても、入金の度に思い出すことになるので、いちいち不快になることもあるでしょう。
また、保険会社が今後存続し続けるとも限りません。経営破たんするかもしれませんし、社会情勢が変わって保険会社というものがなくなるおそれもあります。
平均余命まで、ずっと支払いを受け続けることができるという保証はないのです。
そこで、多くの遷延性意識障害の患者の家族は、定期金賠償によるお金の受け取り方法を希望しません。
示談交渉でこういった提案をされたときには断った方が良いでしょうし、裁判になった場合には、定期金賠償を望まないことを明らかにし、定期金賠償が相当ではないということを明確に主張していくべきです。

2-9.平均余命について

遷延性意識障害の患者に対する後遺障害逸失利益や将来介護費用の計算をするとき「平均余命」も重要な要素です。
通常、後遺障害逸失利益は、就労可能年齢である67歳までの分が認められます。また、将来介護費用については、平均余命までの分が認められます。
しかし、相手の保険会社と示談交渉を進めていると、「遷延性意識障害の患者は、早く亡くなる方が多いので、平均余命を短くすべきだ」と主張してくることがあります。
平均余命を短くすると、就労可能年齢まで働けない計算となることも多く、逸失利益が大きく減額されますし、将来介護費用の計算にはダイレクトに響いてきます。
この点については裁判所の判断も分かれており、多数の例では、遷延性意識障害の患者の平均余命を短くせず、一般人と同様としています。
ただ、通常のケースよりも短縮すべきと判断した裁判例もあるので、患者としては油断できません。
効果的に対処して、賠償金の不当な減額を防ぐためには、交通事故問題に強い弁護士に対応を依頼する必要があります。
 

3.遷延性意識障害の場合の示談交渉の進め方

交通事故で被害者が遷延性意識障害になってしまったら、本人は意識がない状態が続きますので、自分で示談交渉を進めることができません。
この場合、誰がどのようにして示談を進めたら良いのでしょうか?
もし、患者が未成年であれば、親が法定代理人になるので、親が代理で示談交渉を進めることができます。
これに対し、患者が成人の場合には、親族が勝手に示談をすることはできません。親族が代理で示談をするには、本人が委任する必要がありますが、本人に意識がない以上、代理を依頼することもできないためです。
同じ理由で、親族が勝手に弁護士に依頼することもできません。
この場合、「成年後見人」を選任する必要があります。
成年後見人とは、判断能力が低下した人のため、財産管理や身上監護を行う人です。
認知症などの影響により、自分で適切に財産を管理出来なくなった場合などでよく利用されています。
遷延性意識障害の場合にも、患者が自分で財産処分や権利行使をすることができないので、成年後見人の選任が可能です。
成年後見人を選任するためには、家庭裁判所に対し「成年後見人選任の申立」を行う必要があります。
申立書を作成して、戸籍謄本や医師の診断書などの資料を用意して提出すると、審理が行われて後見開始の審判が下されます。
成年後見人の候補者を立てることもできるので、親族に適当な人がいる場合には、候補者としてその人を成年後見人として選んでもらうと良いでしょう。
成年後見人は、本人の代理権を持つので、相手の保険会社と示談交渉を続けて本人のために賠償金を受けとり、本人のために金銭管理をしていくことができます。

4.遷延性意識障害の場合の病院の探し方


遷延性意識障害になった場合、入院する病院探しに困ることも多いです。
遷延性意識障害の患者は、自宅で介護することが難しく、長期間の入院が必要になるケースがよくあります。
しかし、病院からは、入院後3ヶ月程度が経過すると、「そろそろ転院先を探してほしい」と言われてしまいます。
しかし、遷延性意識障害の患者を受け入れてくれる病院は多くはありませんし、入院先が見つかったとしても、適切な治療を受けられるとは限りません。
さらに、転院先でも、また3ヶ月が経過した頃、「転院先を探して下さい」と言われてしまいます。
このようにして、短期間で病院を転々とする遷延性意識障害の患者がとてもたくさんいます。

4-1.3ヶ月ごとに転院を言われる理由

遷延性意識障害の患者が3ヶ月ごとに転院するよう言われるのは、現在の保険診療体制に原因があります。
現在の制度では、入院期間が90日を超えると保険点数が大きく減点されてしまいます。
そこで、3ヶ月以上同じ患者が入院していると、病院の収入が減ってしまうために、患者に対し、早期の転院を促してくるのです。
このような事情は患者側にとっては関係のない病院側の事情なのですが、「受け入れができない」と言われてしまっては、患者としても転院せざるを得ないのが現状です。

4-2.良い転院先の探し方

遷延性意識障害の患者を積極的に受け入れてくれて、適切なケアを行ってくれる病院は少ないです。
良い転院先を探すためには、まずは、現在入院している病院の医師やソーシャルワーカーに相談してみましょう。
同じ系列の病院に転院させてもらえるケースもありますし、ソーシャルワーカーが、市内や同じ都道府県の病院への転院を打診してくれケースもあります。
また、自治体の福祉課や保健センターに相談してみるのも1つの方法です。
さらに、遷延性意識障害の患者家族に聞くのも有効です。
これまで同じ悩みを抱えて病院を探してきた経験を持っているので、有用な情報を得ることができるでしょう。
遷延性意識障害の家族の会などに入って、情報収集をすると良いです。
交通事故問題に力を入れている弁護士も、遷延性意識障害のケースを多く取り扱っているので、良い病院を知っているケースがあります。
そこで、保険会社との示談交渉を弁護士に依頼しているなら、その弁護士に心当たりがないか、聞いてみると良いでしょう。
適切な施設がない場合には在宅介護の選択肢もあるので、弁護士と相談しながら適切な方法を選びましょう。
 

まとめ

今回は、交通事故で遷延性意識障害になった場合の対処方法をご説明しました。
遷延性意識障害になると、後遺障害1級が認定されて、高額な後遺障害慰謝料や逸失利益、将来介護費用などを請求することができますが、相手からはさまざまな反論をされる可能性が高いです。
生活費控除を行うべきとか平均余命が短いなどと言われるケースもあります。
適切に対抗していくためには、交通事故に強い有能な弁護士の力を借りることが重要です。
交通事故で家族が植物状態になってお困りの場合には、お早めに弁護士に相談することをお勧めします。