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後遺障害逸失利益とは?計算方法と請求時の注意点を確認!

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後遺障害損失利益の計算
交通事故で後遺障害が残り、身体が不自由になってしまったら、被害者は大変な苦痛を受けます。
日常生活でも仕事でも、不都合が発生してしまうでしょう。
そこで、相手から適切な賠償をしてもらう必要があります。
後遺障害が残った場合、後遺障害逸失利益という種類の賠償金を支払ってもらえるケースが多いです。
実は、逸失利益は、後遺障害慰謝料よりもずっと高額になる可能性があるので、示談交渉の際に非常に重要です。
そこで今回は、交通事故の後遺障害逸失利益について、解説します。

1.後遺障害逸失利益とは

1-1.逸失利益は、将来の失われた収入のこと

みなさまは、後遺障害というと、「慰謝料」を思い浮かべることが多いのではないでしょうか?
しかし、実は慰謝料よりも「後遺障害逸失利益」の方が、ずっと高額になることがあります。
後遺障害慰謝料は最高でも2800万円程度ですが、後遺障害逸失利益は1億円を超えることも珍しくありません。
後遺障害逸失利益は、交通事故の後遺障害により、労働能力が低下するため、本来得られるはずだったのに得られなくなってしまった将来の収入のことです。
たとえば、後遺障害で右手が動きにくくなったら、右手で作業をすることができないので、仕事内容が大きく制限されることが明らかです。
そこで、その将来の減収分を、「逸失利益」として支払ってもらうことができます。
逸失利益とは、「失われた利益」のことです。

1-2.慰謝料との違い

「後遺障害逸失利益は、慰謝料と何が違うの?」と思われるかもしれません。
逸失利益と慰謝料は、全く違います。
まず、逸失利益は、先に説明した通り、将来の失われた減収分のことです。
そこで、逸失利益は、事故当時に収入を得られる見込みがあった人にしか認められません。
また、将来の減収分ですので、具体的な数値を入れて「計算」することができます。
これに対し、後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ったことによって被害者が受ける精神的苦痛に対する賠償金です。
このような苦しみは、収入のあるなしにかかわらず誰でも受けるものですから、後遺障害慰謝料は、基本的に被害者が誰であっても認められます。
また、慰謝料は、精神的苦しみに対するものです。
いわば見えないものに対する賠償金ですから、数字を入れて計算することはできません。慰謝料には、だいたいの相場が決まっているだけです。

1-3.慰謝料と逸失利益の両方を請求できる

このように、後遺障害逸失利益と慰謝料は全く異なります。
仕事をしていた人が交通事故に遭い、後遺障害が残った場合には、後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料の両方を請求することができます。
 

2.後遺障害逸失利益の計算方法

それでは、後遺障害逸失利益はどのようにして計算することができるのでしょうか?
以下で、計算式を確認しましょう。

2-1.基本の計算式

計算式
後遺障害逸失利益の基本の計算式は、以下のとおりです。
「事故前の基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」
式だけを見てもよくわからないでしょうから、以下で順番に説明していきます。

2-1.基礎収入とは

まずは、事故前の基礎収入について、理解しましょう。
基礎収入というのは、計算の基礎にする収入のことです。
後遺障害逸失利益を計算するときには、交通事故前の実際の収入を基準にします。
また、使用する収入は「年収」です。
そこで、後遺障害逸失利益を請求するには、事故前の年収を証明する資料が必要です。
たとえば、会社員なら源泉徴収票が必要ですし、自営業者なら確定申告書の控えが資料となります。
実際に収入を得ていなかった人の場合には、賃金センサスの平均賃金を利用することなどがあります。

2-2.労働能力喪失率とは

次に、労度能力喪失率について、知っておきましょう。
これは、後遺障害によって、どの程度労働能力が失われたかという割合のことです。
後遺障害と言ってもいろいろなものがあります。
そこで、後遺障害の内容によって、労働能力の低下率には違いがあります。
たとえば、右手が全く使えない場合と、右手の小指だけが失われた場合とでは、労働に与える影響が全く異なることは明らかです。
交通事故の後遺障害で、完全介護が必要になって全く働けなくなることもありますが、むちうちなどの後遺障害で、仕事にほとんど支障がない、と言う場合もあるでしょう。
そこで、後遺障害では、等級ごとに「労働能力喪失率」が定められています。
後遺障害逸失利益を計算するときには、認定された等級における「労働能力喪失率」をかけ算することにより、実際の減収分を計算します。
後遺障害の等級ごとの労働能力喪失率は、以下の通りです。

等級       労働能力喪失率

1級        100%
2級        100%
3級        100%
4級        92%
5級        79%
6級        67%
7級        56%
8級        45%
9級        35%
10級      27%
11級      20%
12級      14%
13級      9%
14級      5%
このように、1級~3級になると、完全に労働能力がなくなったとみなされるので、後遺障害逸失利益は非常に高額になります。
反対に、14級の場合などでは5%ですから、多額の逸失利益を望むことはできません。
それでも数百万円程度にはなるので、交通事故で後遺障害が残ったら、必ず等級認定を受けることが大切です。

2-3.ライプニッツ係数とは

後遺障害逸失利益を計算するとき、「ライプニッツ係数」を無視することはできません。
多くの方は、このような言葉を聞いたことがないでしょう。一体何のことなのでしょうか?
後遺障害逸失利益は、将来の失われた減収分です。
そしてこのような将来の収入は、本来であれば、毎年その都度受けとるはずだったものです。
ところが、交通事故の賠償金として受けとる場合には、一括して受けとることになってしまいます。
すると、受けとったお金を運用して増やすことも可能となります。
このような運用利益は、本来得られなかった利益なので、逸失利益計算の際に、差し引きしなければなりません。
つまり、逸失利益計算の際には、先取りする利息を引かなければならないということです。このときに差し引かれるべき利息のことを、中間利息と言います。
中間利息控除のために使う係数が「ライプニッツ係数」です。
ライプニッツ係数は、決まった数字となっているので、計算するときにはライプニッツ係数の表を参照しながら、自分であてはめて計算する必要があります。
 

年齢ごとのライプニッツ係数の表

年齢 年数 係数 年齢 年数 係数 年齢 年数 係数 年齢 年数 係数
18 49 18.169 39 28 14.898 60 12 8.863 81 4 3.546
19 48 18.077 40 27 14.643 61 11 8.306 82 4 3.546
20 47 17.981 41 26 14.375 62 11 8.306 83 4 3.546
21 46 17.88 42 25 14.094 63 10 7.722 84 4 3.546
22 45 17.774 43 24 13.799 64 10 7.722 85 3 2.723
23 44 17.663 44 23 13.489 65 10 7.722 86 3 2.723
24 43 17.546 45 22 13.163 66 9 7.108 87 3 2.723
25 42 17.423 46 21 12.821 67 9 7.108 88 3 2.723
26 41 17.294 47 20 12.462 68 8 6.463 89 3 2.723
27 40 17.159 48 19 12.085 69 8 6.463 90 3 2.723
28 39 17.017 49 18 11.69 70 8 6.463 91 2 1.859
29 38 16.868 50 17 11.274 71 7 5.786 92 2 1.859
30 37 16.711 51 16 10.838 72 7 5.786 93 2 1.859
31 36 16.547 52 15 10.38 73 7 5.786 94 2 1.859
32 35 16.374 53 14 9.899 74 6 5.076 95 2 1.859
33 34 16.193 54 14 9.899 75 6 5.076 96 2 1.859
34 33 16.003 55 14 9.899 76 6 5.076 97 2 1.859
35 32 15.803 56 13 9.394 77 5 4.329 98 2 1.859
36 31 15.593 57 13 9.394 78 5 4.329 99 2 1.859
37 30 15.372 58 12 8.863 79 5 4.329 100 2 1.859
38 29 15.141 59 12 8.863 80 5 4.329 101 1 0.952

就労可能年数について

ライプニッツ係数によって逸失利益を計算するとき、「どの数値を使ったらいいの?」とわからなくなることが多いでしょう。
このとき「就労可能年数に対応するライプニッツ係数」を利用します。
一般的に、就労可能年齢は67歳までと考えられています。
そこで、採用するライプニッツ係数は、67歳から現在の年齢を引いた年数に対応する数字です。
たとえば、現在40歳の人が被害者になった場合、採用するライプニッツ係数は、27年分に相当するものです。
上記の表を見ると、14.643となります。

未成年者のライプニッツ係数

未成年者の場合には、別途の考慮が必要となります。
一般的に、18歳から就業すると考えられているので、未成年者は就労しません。
そこで、未成年者の就労可能年数は47年となります。
ただ、未成年者は18歳までの間は働かないので、その分も考慮しなければなりません。
そこで、未成年者のライプニッツ係数を計算するときには、現在の年齢から67歳までの年数に対応するライプニッツ係数から、18歳になるまでの年数に対応するライプニッツ係数を引き算します。
たとえば、12歳の未成年者の場合、67歳になるまでの年数に対応するライプニッツ係数(55年分)は、18.6335です。
そして、18歳までの年数に対応するライプニッツ係数(6年分)は、5.0757です。
そこで、12歳の未成年者のライプニッツ係数は、18.6335-5.0757=13.5578となります。
ただ、実際には、このような計算をしなくても、以下の速算表を用いて計算すると良いです。

年齢 一般的な未成年者(一般的な未成年者の場合、こちらを使って計算すると良いです) 有識者
就労可能年数 係数 就労可能年数 係数
0 49 7.549 67 19.239
1 49 7.927 66 19.201
2 49 8.323 65 19.161
3 49 8.739 64 19.119
4 49 9.176 63 19.075
5 49 9.635 62 19.029
6 49 10.117 61 18.98
7 49 10.623 60 18.929
8 49 11.154 59 18.876
9 49 11.712 58 18.82
10 49 12.297 57 18.761
11 49 12.912 56 18.699
12 49 13.558 55 18.633
13 49 14.236 54 18.565
14 49 14.947 53 18.493
15 49 15.695 52 18.418
16 49 16.48 51 18.339
17 49 17.304 50 18.256

 

3.どういったケースで高額になるのか?

後遺障害逸失利益は、どのようなケースで高額になるのでしょうか?

3-1.後遺障害の等級が高い場合

まずは、後遺障害の等級が高いケースです。
この場合、労働能力喪失率が高くなるので、その分逸失利益も高額になります。
たとえば、他が同じ条件の場合、100%の労働能力喪失率が認められるのと、5%の労働能力喪失率が認められるのとでは、単純に20倍の開きが発生します。
そこで、交通事故の影響で後遺障害が残った場合には、なるべく高い等級の認定を受けることが重要となります。

3-2.被害者の年収が高い場合

年収が高いケース
次に、被害者の年収が高いケースでは、後遺障害逸失利益が高額になります。
逸失利益の計算の際には、被害者の年収を基礎収入として計算するからです。
被害者の年収は、実際の年収をそのまま適用できることもありますが、そうでないケースも意外と多いです。
たとえば賃金センサスを利用するときにも、全年齢のものを使うのか、年齢別にするのか、学歴別にするのか、男女別にするのかなどで大きな差が発生します。
また、収入の変動が激しい自営業者などの場合、そもそも事故前の年収がいくらであったかが争いになるケースもあります。
そこで、後遺障害が残ったときになるべく高額な逸失利益の支払いを受けたいときには、なるべく高額な基礎収入を認めてもらうことが重要です。
相手の保険会社は、基礎収入を低く見積もってくることが多いので、相手の言うことを鵜呑みにしないように注意しましょう。

3-3.被害者の年齢が若い場合

後遺障害逸失利益は、被害者の年齢が若い場合に高額になります。
年齢が若いほど、就労可能年数が多くなるためです。
たとえば同じ年収の人がいるとき、25歳だったらその後42年間収入を得続けることができますが、60歳ならあと7年しか働くことができません。
また、平均賃金を使って計算をするときにも、若者なら全年齢の平均賃金を使いますが、高齢者の場合、年齢別の平均賃金を使うことが多くなります。
通常、高齢者より全年齢の方が平均賃金は高額になるので、全年齢の平均賃金を使った方が、逸失利益は高額になります。
そこで、若者が交通事故に遭うと、高齢者より高額な逸失利益が認められることが多くなります。
年収の高い若年者に重い後遺障害を負ったケースでは、逸失利益が1億円を超えるケースも珍しくありません。

3-4.計算の具体例

次に、具体例で、後遺障害逸失利益計算方法を確認してみましょう。

30歳で年収500万円、後遺障害等級6級のケース

後遺障害6級は、両眼の視力が0.1以下になったときや、両耳の聴力が著しく低下したとき、片耳が完全に聞こえなくなったとき、片手や片脚を動かせなくなったときなどに認められます。
労働能力喪失率は、67%です。
30歳ですから、ライプニッツ係数は16.711です。
基礎収入は500万円です。
そこで、後遺障害逸失利益は
500万円×0.67×16.711=5598万1850円となります。

40歳で年収600万円、後遺障害等級12級のケース

後遺障害12級は、片眼の眼球やまぶたに運動障害が残ったときや、7本以上の歯が大きく毀損した場合、片手や片脚の関節機能に障害が残ったときや片手の小指を失ったとき、重いむちうちのケースなどで認められる等級です。
労働能力喪失率は、14%です。
40歳の場合、ライプニッツ係数は14.643です。
年収600万円なので、基礎収入は600万円です。
すると、後遺障害逸失利益は
600万円×0.14×14.643=1230万0120円となります。

20歳で年収300万円、後遺障害等級3級のケース

後遺障害3級は、非常に重い等級です。片眼が失明して、もう片方の眼も視力が0.06以下になった場合、咀嚼機能や言語機能が失われた場合、一生何の仕事もできないくらいに神経や精神状態に障害が残ったとき、内臓機能が失われて一生仕事ができなくなったとき、両手の指がすべて失われたケースなどで認定されます。
労働能力喪失率は、100%です。
被害者は20歳ですから、ライプニッツ係数は17.981となります。
基礎収入は300万円なので、後遺障害逸失利益は、以下の通りとなります。
300万円×100%×17.981=5394万3000円

4.後遺障害逸失利益が認められる人

次に、後遺障害逸失利益はどのような人に認められるのかも確認しましょう。

4-1.基本は、事故前に働いていた人

働いてた人
逸失利益は、労働能力が低下することにより、本来なら得られたのに得られなくなってしまった収入です。
そこで、基本的には、事故前に労働をしていた人に認められます。
たとえば、会社員や公務員、自営業者、フリーランスやアルバイトなどの人です。
会社員や公務員、アルバイトの場合には給与明細書や源泉聴取表、自営業者やフリーランスなどの場合には確定申告書の控えにより、基礎収入の金額を算定します。

4-2.会社役員

会社役員が被害者の場合にも、基礎収入が問題になることが多いです。
会社役員は、会社から役員報酬をもらっているので、それをそのまま基礎収入にすれば良いのではないか?
と考えるかもしれませんが、そういうわけにはいきません。
会社役員が受けとっている報酬は、全部が労働の対価ではないからです。
役員報酬には、役員に対する利益配当的な部分が含まれています。
利益配当部分は、労働提供による報酬ではないので、基礎収入に算入することができないのです。
そこで、会社役員の報酬については、「労働対価部分」と「利益配当部分」に分けて、労働対価部分だけを基礎収入に算入します。
労働対価部分と利益配当部分の比率は、ケースによって個別に判断する必要があります。
その際、会社の規模や業種、役員が行っている仕事内容などが考慮されます。
会社規模が小規模の場合、労働対価部分が大きくなりやすく、ときには100%になることもあります。
また、社長の業務内容が会社にとって非常に重要(主たる研究開発を行っているなど)の場合にも、労働対価部分を大きく評価してもらうことができます。
役員が後遺障害逸失利益を請求するとき、相手の保険会社からは「利益配当部分がある」と言われて大きく減額されることが多いですが、そのまま受け入れる必要はありません。対応に困ったときには弁護士に相談しましょう。

4-3.家事労働者

家事労働者とは、主婦や主夫のことです。
これらの人は、実際には収入がないので、後遺障害逸失利益が認められないとも思えます。
しかし、家事労働者でも、後遺障害逸失利益を支払ってもらうことができます。
家事ができなったら家政婦を雇わなければなりませんが、家政婦を雇ったら費用がかかります。
このことからもわかるように、家事には労働としての価値があることが明らかだからです。
ただ、家事労働者の場合、基礎収入をいくらにすべきかが問題です。
この場合には、賃金センサスという賃金の統計資料を使います。
その中でも「全年齢の女性平均賃金」によって、基礎収入を算定します。
平成28年度の全年齢の女性平均賃金は、376万2300円です。
また、パート労働をしている兼業主婦の場合にも、基本的には専業主婦と同じ全年齢の女性平均賃金を使って計算します。
パート収入は通常女性平均賃金より低いので、パート収入を使うと専業主婦との間で不公平になってしまうためです。
男性が家事をしている場合の主夫のケースでも、基礎収入が問題となります。
このとき、全年齢の男性平均賃金を使うと、女性のものより高額になって、主婦との間で不公平になってしまいます。
そこで、主夫の後遺障害逸失利益計算の際にも、女性のケースと同様に全年齢の女性平均賃金を利用します。

4-4.学生

被害者が学生のケースでも、後遺障害逸失利益が認められます。
学生は、事故当時には働いていなくても、将来就職をして収入を得られる蓋然性が高いからです。
ただ、この被害者の場合にも、現実の収入がないため、やはり基礎収入の算定方法が問題となります。
実際には、やはり平均賃金を使って計算します。高校生以下の場合には、学歴計、男女別の平均賃金を採用します。
ただし、大学進学を強く希望していて進学の蓋然性が高い場合などには、大卒の平均賃金を利用することがあります。
学歴計よりも大卒の方が、基礎収入が高額になるため、示談交渉の際には、なるべく大卒の平均賃金をあてはめるべきです。
大学生の場合には、大卒の男女別平均賃金を使うことが多いです。
ただ、就職が内定していた場合には、内定先の給料が基準になることもあります。
後遺障害逸失利益を高額にしたいときには、基礎収入を高額にしてもらうことが重要ですから、相手との示談交渉の際、自分に有利な事情を見逃さないように進めていく必要があります。
 

5.後遺障害逸失利益が認められない人

後遺障害逸失利益は、もらえない人もいます。それは、以下のような人です。

5-1.無職無収入の人

後遺障害逸失利益は、将来収入を得られる蓋然性のある人に認められます。
そこで、事故当時に無職無収入の人には、基本的に逸失利益が支払われません。
ただ、事故当時に失業していても、本人に就労意欲があり、実際に就労する能力があり、就労できる蓋然性も高かった場合には、逸失利益を支払ってもらうことができます。
そこで、事故当時たまたま失業中であったり就職活動中であったりする場合には、相手の保険会社が「逸失利益はない」と言ってくることがあります。
しかし、このような場合にも、相手の言うことを鵜呑みにせず、適切に後遺障害逸失利益を請求する必要があります。

5-2.不労所得収入で生活している人

後遺障害逸失利益が認められるのは、労働によって収入を得ている人に限られます。
そこで、株の配当や不動産収入のように、不労所得によって生活している人には逸失利益が認められません。
サラリーマンが副業で賃貸経営している場合のように、給与収入と不労所得の両方がある場合には、給与収入のみを基礎収入として逸失利益を計算します。

5-3.年金生活者

年金生活者
年金生活者には、後遺障害逸失利益が認められません。
後遺障害が残っても、年金の受給権は無くなりも減りもしないからです。
この点は、死亡逸失利益と異なるので、注意が必要です。
老齢年金や障害年金の受給者が死亡した場合には、死亡逸失利益が認められます。
これは、死亡すると年金が受け取れなくなるからです。
このように、年金生活者については、死亡逸失利益と後遺障害逸失利益で異なる扱いになることを、押さえておきましょう。
 

6.後遺障害逸失利益を請求する際の注意点

後遺障害逸失利益を請求するとき、注意しなければならない点があるので、見ていきましょう。

6-1.減収が発生していないケース

まずは、減収が発生していないケースがあります。
交通事故で後遺障害が残ったときに逸失利益を支払ってもらえるのは、将来にわたって得られる収入が減少するためです。
そこで、後遺障害逸失利益を請求するためには、減収が発生している必要があると考えられています。
しかし、事故後も収入が低下しないこともあります。
この場合、相手の保険会社からは「減収がないので、逸失利益はない」と言われて、逸失利益の支払いを拒絶されてしまうおそれが高いです。
確かに、減収が起こっていない場合には、後遺障害逸失利益が認められない可能性があります。
ただ、後遺障害によって本来なら減収が発生するはずだけれども、本人が努力することにより、減収を避けられている場合もあります。
また、今は減収が発生していないけれども、今後昇給や転職をすることが難しく、減収が発生する見込みが高いケースもあります。
そこで、本人の特別の努力によって収入が維持されている場合や、将来昇給、昇進、転職などで不利益を受ける蓋然性が高い場合などには、減収がなくても後遺障害逸失利益を請求することができます。
保険会社から「逸失利益はない」と言われても、諦める必要はありません。

6-2.労働能力が低下していないケース

後遺障害の内容はさまざまで、多くのケースで労働能力が低下するのですが、中には労働能力への影響がない(または小さい)後遺障害があります。
後遺障害逸失利益を請求するときに、相手の保険会社から「労働能力が低下していない」と言われることがあります。
特に問題になるのが、以下のような後遺障害が残ったケースです。

  • 外貌醜状

外貌醜状とは、頭部や顔面等の外から見える箇所に、傷跡や瘢痕などが残った場合に認められる後遺障害です。
こうした醜状が残っても、労働能力が低下したとは考えにくいと言われます。
しかし、モデルなどの場合には醜状が残ると仕事に影響があることが明らかですし、営業マンなどの場合にも、見た目の印象が重要です。
そこで、外貌醜状だから労働能力喪失がない、とは言えません。

  • 脊柱変形

後遺障害11級相当の脊柱変形の場合、労働能力に影響がないと言われることがあります。
この場合、完全に労働能力喪失率が否定されることは少ないですが、基準である20%よりは下げられることが多いです。

  • 鎖骨変形
  • 腸骨採取による骨盤骨の変形
  • 腓骨の偽関節

これらのケースでも、労働能力喪失が認められないと言われることが多いです。
ただ、機能の喪失がなくても疼痛がある場合には、一部労働能力の喪失が認められる場合もあります。

  • 1cm以上3cm未満の下肢の短縮

この場合にも、実際の労働能力に対する影響がないと言われて、逸失利益を否定されることがあります。
ただ、短縮の程度が1cmか3cm弱かによって状況は異なりますし、被害者の仕事内容によっても影響が異なります。
たとえば、スポーツ選手や肉体労働者、とび職人などの場合には、3cmの短縮障害が起こると、大きく労働能力に影響すると言えるでしょう。

  • 歯牙障害

歯牙障害が起こって歯に歯科治療を及ぼした場合、日常生活や仕事は普通にできることが多いです。
ただ、歯を食いしばるような仕事には不都合がありますし、言語障害が起こるケースなどもあるので、一概に逸失利益がないとは言えません。

  • 嗅覚・味覚障害

嗅覚障害や味覚障害の場合にも、逸失利益を否定されやすいです。
しかし、調理師や料理人などの場合には、これらの能力が失われると労働能力に影響することが明らかです。
また、主婦の場合にも、料理ができなくなって労働能力が低下します。

  • 脾臓喪失

脾臓がなくなっても人間が生きていくのに支障はないと言われているため、事故によって脾臓を失った場合には、後遺障害を否定されてしまうことがあります。
特に、以前脾臓喪失の等級が8級であった際には、否定する裁判例が多かったです。
しかし、現在は等級が変更されて、脾臓喪失は13級になっています。
このことで基準となる労働能力が下がったこともあり、現在は、基準通り、13%の労働能力喪失率を認めてもらえることが多いです。
 

まとめ

今回は、後遺障害逸失利益とその計算方法をご説明しました。
後遺障害逸失利益は、労働能力が低下することによって得られなくなってしまった将来の収入のことです。
認定された等級に応じて労働能力喪失率が異なり、高い等級であるほど高額な逸失利益を支払ってもらうことができます。
後遺障害が残ったら、正しく後遺障害逸失利益を計算して、確実に支払いを受けることが大切です。
自分で適切な対処方法がわからない場合には、交通事故問題に強い弁護士に相談して、アドバイスを受けると良いでしょう。
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