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加害者の業務中の事故では、こんなことに注意しよう!

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交通量の多い道路
交通事故に遭ったら、基本的には相手の保険会社と示談交渉をして示談金を支払ってもらう、という流れになりますが、
相手の仕事中に発生した事故の場合、通常のケースとは異なる対応が必要になる可能性があります。
そこで今回は、加害者の業務中の事故における注意点を解説していきます。

1.業務中の事故とは

交通事故では、加害者の業務中に起こるケースがあります。
たとえば、相手が運送業者で、荷物を運搬しているところ、こちらの車と接触してしまった場合などです。
相手がタクシーやトラックのケースもありますし、相手がピザ屋の宅配をしていることもあるでしょう。
また、相手が運送業者や宅配を専業にした人でなくても、業務中の事故はありえます。
たとえば、単に営業の社員が社用車に乗って移動中だったということもあるでしょう。
このようなことを考えると、交通事故で相手が業務中ということは、決して珍しくないことがわかるはずです。
 

2.誰に賠償金を請求できるのか?

相手が業務中に発生した交通事故の場合、通常の交通事故とどのような点が異なるのでしょうか?
「普通に、相手に賠償金を支払ってもらえばいいんじゃないの?」と思われるかもしれません。
しかし、実際にはそうとは限りません。
業務中の場合、損害賠償請求の相手が通常事故とは異なってくる可能性があります。
具体的には、加害者本人だけではなく、加害者を雇っている会社に対しても、賠償金の請求ができるケースが多いです。
そしてその場合、誰と示談交渉をするかが異なってきます。
会社が責任を負い、会社の保険が適用される場合には、会社の代理の保険会社と示談交渉を進めていくことになりますし、会社が保険に入っていない場合には、会社そのものに対し、損害賠償請求をしないといけないこともありうるからです。
会社が保険に入っていないなんてあり得るのか?
と思うかも知れませんが、実際にトラック会社などの中には任意保険に加入していない会社が意外に多いです。
そこで、加害者の業務中の事故の場合、どういったケースで誰に賠償金の請求をすることができるのか、正確に理解しておく必要があります。
 

3.加害者本人は、常に責任を負う

まず、事故を起こした加害者は、常に責任を負います。
相手は、自動車を運転しているとき、過失によって被害者に損害を与えたのですから、被害者に対して損害賠償義務を負うためです(民法709条)。
ただ、加害者が自動車保険に加入していない場合には、加害者本人に賠償金を請求しても、払ってもらえないおそれがあります。
 

4.雇用者(会社)が責任を負うケース

それでは、業務中の事故の場合で、雇用者である会社が責任を負う場合とは、どういったケースなのでしょうか?
少し難しい話になりますが、会社が責任を負う場合、その法律的な根拠が問題になります。
1つは運行供用者責任、もう1つは使用者責任というものです。
それぞれ、成立するケースと内容が異なってくるので、以下でそれぞれについて、理解しておきましょう。

4-1.運行供用者責任とは

「運行供用者責任」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
一般的にはあまりなじみがないので、「何それ?」と思った方が多いかも知れません。
これは、自賠責法(自動車損害賠償保障法)3条によって規定されている責任で、広く自動車の運行によって利益を受けている人に、交通事故の責任を負わせようというものです。
そこで、運行供用者責任を負う人は、「運行利益」と「運行支配」がある人です。
運行利益とは、自動車の運転によって利益を受けている人です。
運行支配とは、車の運転をコントロールできる立場にある、ということです。
たとえば、車の所有者や、車を従業員に運転させている雇用者などは、運行利益や運行支配があるとされます。
ただし、盗難車などで、勝手に運転されていた場合には、運行利益も運行支配もないので、運行供用者責任は発生しません。
会社が従業員を使って車を運転させていたときには、多くの場合会社に運行供用者責任が発生するので、被害者は相手の会社に賠償金の請求をできる可能性があります。

4-2.使用者責任とは

加害者の会社は、「使用者責任」という責任を負う可能性もあります。
使用者責任は、運行供用者責任よりもわかりやすいです。
これは、人を雇用している場合、被用者(雇用されている人)が業務に関連して不法行為をしたら、雇用者が被用者と同様の不法行為責任を負う、というものです。
民法715条に規定があります。
人を働かせて利益を得ているのだから、その人が仕事に際して人に迷惑をかけたのであれば、雇用者も責任をとるべき、という考え方から来ています。
加害者が業務中に事故を起こしたら、多くの場合会社に使用者責任が発生するので、被害者は、使用者責任にもとづいても、会社に対して賠償金を請求できる可能性があります。
 

5.会社名義の車のケース

交通事故
以下では、それぞれのケースで、具体的に会社にどのような責任が発生するのか、またはしないのかについて、個別に確認していきましょう。

5-1.業務中の事故

まずは、従業員(加害者)が起こした交通事故が、業務中であった場合です。
加害者が業務中に、会社名義の車で事故を起こした場合、会社は車の所有者ですから、基本的に運行供用者責任を負います。
また、交通事故は従業員が業務中に行った不法行為ですから、会社には使用者責任も発生します。
そこで、被害者は、運行供用者責任によっても使用者責任によっても、会社に対して損害賠償請求ができることになります。

5-2.業務中でなかった事故

加害者が会社名義の社用車などに乗っていても、それが業務中ではなかったケースがあります。
この場合には、会社に責任を問うことができるのでしょうか?
業務中の事故ではなかった場合には、使用者責任は発生しません。
使用者責任は、業務執行中に行われた不法行為について成立するものだからです。
これに対し、会社名義の車によって引き起こされた事故ですから、所有者である会社には運行供用者責任が発生します。
 

6.相手のマイカーのケース

次に、相手のマイカーで事故が起こった場合について、考えてみましょう。

6-1.業務中の事故

加害者が業務中、マイカーで交通事故を起こした場合には、まず、運行供用者責任が発生します。
この場合、会社は車の所有者ではありませんが、従業員が車を運転することによって利益を受けていますし、コントロールを及ぼすことができる立場だからです。
ただし、会社の規定で「マイカーの利用は禁止」されているにもかかわらず、相手が勝手にマイカーを仕事に使っていた場合などには、会社に運行支配や運行利益が認められず、運行供用者責任が発生しない可能性があります。
次に、この場合、基本的に使用者責任も発生します。
業務執行中に行われた不法行為なので、車の名義を問わず、会社に責任が及ぶためです。
会社がマイカー利用を禁止していたとしても、被用者が業務中に不法行為をした、という要件を満たす限り、使用者責任を問うことは可能です。
そこで、相手が会社規定に違反して、運行供用者責任が発生しないときには、使用者責任をもとに、相手の会社に責任追及をすることができます。

6-2.業務中でなかった事故

それでは、相手のマイカーで、業務中ではなかった事故の場合、会社は責任を負うのでしょうか?
この場合、基本的に会社は責任を負いません。
まず、車は会社名義ではありませんし、業務中でもないのですから、会社には運行による利益もありませんし、会社がコントロールすることもできませんので、運行供用者責任は発生しません。
また、業務執行中ではないので、使用者責任も発生しません。
結局、この場合「会社と無関係な事故」なので、会社には責任追及できないということです。

6-3.通勤途中の事故

もう1つ、知っておきたいケースがあります。
それは、加害者が通勤途中で事故を起こした場合の責任です。
通勤途中の事故であっても、多くのケースで会社に責任が発生します。
通勤中も、基本的に「業務執行中」と同視されるためです。

通勤ルートを大きく外れないことが必要

ただ、通勤途中と言えるためには、通常の通勤ルートを大きく外れないことが必要です。
たとえば、従業員が会社帰りに映画館に立ち寄って映画鑑賞をし、友人と会って食事をした後、家に帰る途中で事故を起こした場合には、もはや通勤途中とは言えないので、会社が責任を負わない可能性があります。
ただし、社用車の場合には、この場合でも運行供用者責任が発生します。
これに対し、会社帰りにコンビニに立ち寄ってコーヒーを買って、その後帰宅途中に事故を起こした場合などには、いまだ通勤途中と言えるので、運行供用者責任や使用者責任が発生します。

勝手にマイカーを通勤に利用していた場合の問題

また、会社規定でマイカー通勤が禁止されているのに、従業員が勝手にマイカーを通勤に利用していた場合にも、会社に責任が発生しない可能性があります。
この場合、会社は運行利益も運行支配もしていないので運行供用者責任は発生しませんし、業務執行中とは言いがたいので、使用者責任も発生しないでしょう。
ただし、従業員がマイカー通勤しているのを知りながら会社が黙認していた場合には、運行供用者責任などの責任が発生する可能性があります。
このように、業務中の事故や社用車(会社名義の車)による事故の場合、会社に籍に任追及できる場合とその理由が複雑です。
ケースによって、適切な権利を選択して、適切な相手に責任追及をしないといけないので、これを機会にしっかり押さえておきましょう。
 

7.使用者責任と運行供用者責任の両方が成立する場合の選択方法は?

相手の会社に対して損害賠償請求をするとき、使用者責任と運行供用者責任の両方が成立するケースがあります。
たとえば、相手が社用車に乗っていて、かつ業務中の事故の場合には、両方の責任追及が可能です。
このような場合、どちらを選択すれば良いのか?
と迷われる方がいるかもしれません。
この2つの効果には違いがあるのでしょうか?
まず、賠償範囲は同じです。
どちらを選択しても、交通事故で相手に請求できる賠償金については、すべての項目、全額の請求をすることができます。
そこで、どちらかを選択したために賠償金額が下がってしまうことはありません。
異なるのは、立証責任です。
使用者責任の場合には、加害者の過失を被害者が証明しないといけないことになっていますが、運行供用者責任では、加害者の過失は推定されるので、加害者側が無過失であることを証明しなければなりません。
そこで、被害者の立証の負担を考えると、運行供用者責任の方が楽になるケースがあります。
すなわち、相手に過失があるかどうかが争点になりそうなケースでは、運行供用者責任を追及した方が被害者にとって有利です。
なお、弁護士に依頼すると、こうした法的な主張方法などはきちんと検討してくれるので、被害者が自分で考える必要はありません。
 

8.会社と加害者本人の、どちらにどれだけ請求できるのか?

業務中の事故の場合、会社と加害者本人の両方に責任が発生することがあります。
加害者には常に責任が発生するため、会社に運行供用者責任または使用者責任が発生する場合、どちらも責任を負うことになるためです。
このように、両者に責任が発生する場合、被害者としては、どちらにどれだけの請求をすることができるのでしょうか?
たとえば、使用者と加害者本人に半分ずつとか、過失の割合によって計算するなどになるのかが問題です。
この点、加害者本人と雇用者の責任は、「連帯責任」になります。
連帯責任とは、債務者全員が債務全体についての責任を負うという責任のかたちです。
そこで、連帯責任になる場合、会社も加害者本人も損害の全体について責任を負うことになり、被害者としては、加害者と会社の両方に対して全額の賠償請求ができることとなります。
たとえば、損害額が500万円の場合、会社に500万円請求してもかまいませんし、加害者本人に500万円請求してもかまいません。
会社に300万円、加害者に200万円でもかまいませんし、その逆でも良いのです。
つまり、どちらにどれだけ請求しても良いけれど、500万円全額を回収したら、それで全額の満足を得られることとなります。
このように、加害者の業務中の事故で会社にも責任が発生する場合、被害者は、どちらか資力の高い方に責任追及することができるので、賠償金の支払いを受けられる可能性が高くなり、有利になります。
 

9.相手が謝罪しないので、許せない場合は?

怒る
通常の事故の場合、加害者が非常識な人でない限り、被害者から何らかの謝罪があるものですが、加害者の業務中の事故の場合、必ずしも謝罪が行われるとは限りません。
というのも、業務中の事故で相手の会社に責任が発生する場合、相手の会社の保険会社や相手の会社が対応するので、加害者本人がまったく表に出てこないことがあるためです。
交通事故当初から、被害者に電話をかけてくるのも書類を送ってくるのも相手の会社や保険会社だけで、非常にビジネスライクなものとなり、被害者は「加害者は何を考えているのか」と感じてしまいます。
もし、加害者を許せないとか、謝罪してほしいと思っているのであれば、その旨相手の会社や相手の保険会社に伝えましょう。
ただ、その場合、「すでに話は会社の方に移っているので、会社の方で対応する」などと言われて、加害者をやはり前面に出してもらえない可能性があります。
その場合には、加害者に対し、刑事告訴をするのも1つの方法です。
交通事故の中でも人身事故を起こすと、自動車運転処罰法により、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪が成立するため、相手を処罰してもらうことができるためです。
これらの刑事責任については、加害者本人に成立するもので、会社が代わりに処罰を受けることはできないので、刑事告訴をすると、確実に加害者本人を追及することができます。
刑事告訴をしたからと言って必ずしも相手を逮捕してもらえるということにはなりませんが、加害者にプレッシャーを与える意味でも、検討してみる価値はあります。
 

10.業務中の事故で困ったときには、弁護士に相談しよう!

相手の業務中の事故では、通常の事故とは異なる対応が必要になる点があります。
たとえば、誰に対して請求したら良いかわからないこともありますし、加害者が対応しないケースもあります。
加害者に資力がないために会社に対して請求しようとしたところ、会社がトラック会社などで任意保険にも加入しておらず、「交通事故など起こっていない」などと言われて賠償金の支払いを拒絶されることもあります。
このように、相手の業務中の事故で、どのように対応したら良いのかわからないときには、弁護士に対応を相談すべきです。
弁護士であれば、ケースに応じて適切な請求相手を選択してくれますし、依頼すると示談交渉も行ってくれます。
相手や相手の会社の態度が不誠実な場合には、訴訟を起こして責任追及することも可能です。
交通事故の被害に遭ったとき、泣き寝入りをする必要はありません。
困ったときには、弁護士の力を頼って問題を解決してもらいましょう。
 

まとめ

今回は、加害者の業務中の事故における対処方法を解説しました。
業務中の事故の場合、相手のみならず相手の雇用者にも賠償金の請求ができることが多いです。
そこで、まずは誰にどのような損害賠償請求ができるのかを検討することが大切です。
自分では適切に判断することが難しいため、弁護士の力を借りることが役に立ちます。
正しい対応方法がわからないときには、交通事故問題に強い弁護士に相談をして、アドバイスを受けることをお勧めします。
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