交通事故に遭ったら、加害者に慰謝料を請求できると考えられていますが、慰謝料は具体的にどのくらい支払ってもらえるものなのでしょうか?
慰謝料を請求する際弁護士に依頼することもできますが、その場合どのようなメリットがあるのかも知っておきましょう。
今回は、交通事故の慰謝料相場と、慰謝料請求の手続を弁護士に依頼すべき理由をご説明します。
1.交通事故の慰謝料とは
交通事故に遭ったら、相手に当然慰謝料請求できると思われているかもしれません。
ただ、事故の被害者であっても、必ずしも慰謝料請求できるとは限りません。
慰謝料とは、交通事故が原因で被害者が精神的苦痛を被ったときに、相手にその賠償をしてもらうためのお金です。
交通事故の場合、慰謝料が発生するのは人身事故のケースのみです。
交通事故では、人が死傷した事故を人身事故と言い、人が死傷しなかった事故(車が毀れただけのケースなど)を物損事故と言いますが、物損事故では慰謝料が発生しません。
反対に、人身事故に遭って病院治療をした場合には、かすり傷程度であっても慰謝料を請求できます。
2.慰謝料の種類は3種類
交通事故の慰謝料には、以下の3種類があります。
2-1.入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、交通事故によってケガをした場合に発生する慰謝料で、傷害慰謝料とも呼ばれます。
傷害の内容によって金額が異なるのですが、入通院の期間に応じて定額で計算されます。
同じように入通院が必要になったら、同じだけの精神的苦痛を受けるだろうと考えられるためです。
入通院の期間が長くなったら慰謝料の金額は上がりますし、同じ治療期間なら、通院期間より入院期間の方が、慰謝料は高額になります。
2-2.後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、交通事故が原因で、身体に後遺障害が残ってしまったことに対する慰謝料です。
身体にさまざまな後遺障害が残ると、それまでのように自由に身体を動かせなくなるので、人は大きな精神的苦痛を被ります。
そこで、慰謝料が認められます。
ただ、後遺障害とは言っても内容はいろいろです。手が動かなくなったケース、歩けなくなったケース、目が見えなくなったケース、内臓機能が失われたケース、麻痺が残ったケース、脳障害が残ったケースなど、さまざまな可能性があります。
これらを一概に扱うことはできないので、それぞれの後遺障害について「等級」が設けられています。
等級とは、後遺障害のレベルのようなもので、重い方から軽い方まで1級から14級までの等級があります。
当然、重い等級の後遺障害の場合に後遺障害慰謝料の金額も上がります。
たとえば、もっとも低級の後遺障害である14級の場合には、後遺障害慰謝料は110万円程度ですが、最も重度な後遺障害である1級の場合には、後遺障害慰謝料は2800万円程度になります。
2-3.死亡慰謝料
交通事故の3つ目の慰謝料は、死亡慰謝料です。
これは、事故の被害者が死亡した場合に認められる慰謝料です。
「死亡したら、精神的苦痛を感じないのでは?」という疑問を持たれる方がいるかもしれませんが、人は死亡すると、死亡と同時に強い精神的苦痛を感じ、慰謝料が発生すると考えられています。
そして、その慰謝料が相続人に相続されるので、相続人が死亡慰謝料を請求することができます。
死亡慰謝料は、即死の場合だけではなく、事故後治療を続けた後、その甲斐なく死亡した場合にも発生します。
また、死亡慰謝料は、死亡した人に扶養されていた家族がいたかどうかによって金額が変わります。
扶養家族が多い人の方が、死亡慰謝料は高額になります。
2-4.それぞれの慰謝料の関係
1つの事故が発生した場合でも、上記の慰謝料のうち複数を請求できるケースがあります。
まず、人身事故で後遺障害が残らなかったケースでは、発生するのは入通院慰謝料のみです。
次に、人身事故で後遺障害が残った事故の場合には、普通は入通院治療を継続した後後遺障害が確定するので、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の両方を相手に請求することができます。
死亡事故の場合は、即死としばらくしてから死亡した場合とで異なります。
即死の場合には死亡慰謝料のみですが、事故後しばらく治療を継続してから死亡した場合には、治療期間に相当する入通院慰謝料と死亡慰謝料の両方を相手に請求することができます。
慰謝料を請求するときには、すべての慰謝料を見逃さないようにして、それぞれをなるべく高額にしてもらうことが必要です。
3.慰謝料の計算方法も3種類
「交通事故の慰謝料の相場を知りたい」
そのように考える方は多いと思いますが、事故全体に共通する慰謝料相場というものはありません。
考えてみたらわかることですが、交通事故は非常にさまざまです。
かすり傷で1週間もあれば元通りと言うこともありますし、むちうちになることもあります。
骨折することもありますし、手足が不自由になることもあります。
全身に麻痺が残ることもあるでしょう。
こうしたさまざまな事例において、すべて慰謝料が共通なはずがありません。
そこで、交通事故の慰謝料は、事故の結果に応じて全く異なります。
自分のケースでの適切な慰謝料相場を知りたい場合には、慰謝料の計算方法を知っていなければなりません。
では、交通事故の慰謝料は、どのようにして計算するかご存知でしょうか?
実は、交通事故の慰謝料計算方法は3種類もあります。
そこで、以下ではその3種類の計算方法を確認しましょう。
3-1.自賠責基準
1つ目は、自賠責基準です。これは、自賠責保険から保険金を受けとるときに使われる計算基準です。
車を所有する人は、全員自賠責保険に加入しなければなりません。
そこで被害者は、交通事故に遭ったとき、相手の自賠責保険に請求して、保険金の給付を受けられます。
そのときの計算方法が自賠責基準です。自賠責保険は、被害者を守るための最低限の保険なので、その補償額は低額です。
3つの慰謝料計算基準の中で、最も低い金額となります。
3-2.任意保険基準
次に、任意保険基準という基準があります。
これは、被害者が任意保険会社と示談交渉をするときに、任意保険会社が使用する基準です。
実は、任意保険会社が示談交渉をするときに使う基準は、平成11年までは統一基準がありました。これを、旧任意保険基準と言います。
今でも、だいたいその内容に近いる会社が多いのですが、現在は独自に定めて良いことになっているため、会社によってまちまちな部分があります。
任意保険基準の金額は、任意保険会社がいわば勝手に定めている金額なので、それが妥当ということではありません。
金額的にも、次に紹介する弁護士基準より大幅に低い金額となります。
3-3.弁護士基準
3つ目の慰謝料計算方法が、弁護士基準です。
弁護士基準とは、弁護士が示談交渉をするときや、裁判所が訴訟などで賠償金を計算するときに使用する基準です。
過去の判例の積み重ねによって蓄積された考え方なので、法的な根拠があります。
裁判所が使うので、裁判基準とか、弁護士・裁判基準とも呼ばれます。
弁護士基準で慰謝料を計算すると、3つの計算方法のうち最も高額になります。
同じ内容のケガをしたり後遺障害が残ったり、同じように死亡したりしても、弁護士基準で慰謝料を計算したら高額な慰謝料が認められて、任意保険基準で慰謝料を計算したら安くなってしまう、ということは普通に起こっています。
4.それぞれの基準で慰謝料を計算すると、どのくらい?
それでは、それぞれの基準で慰謝料を計算すると、慰謝料はどのくらいの金額になるのでしょうか?
以下で、ご説明します。
4-1.入通院慰謝料
入通院慰謝料を3つの基準で計算してみましょう。
自賠責基準
自賠責基準の場合、入通院慰謝料は、以下の通りの計算式で計算します。
入院でも通院でも慰謝料の金額は同じです。
入通院日数については、治療開始日から治療終了日までの日数を使いますが、実際に入通院した日数が少ない場合、その日数の2倍を基準にします。
たとえば、3ヶ月(90日)の治療期間がかかったケースで、実通院日数が50日なら、90日<50日×2=100日なので、治療期間である90日を採用します。
このとき、入通院慰謝料の金額は、4200円×90日=378000円となります。
そうではなく、同じ治療期間でも実通院日数が40日であれば、40日×2=80日となり、これは90日よりも小さいので、こちらを採用します。
そこで入通院慰謝料の金額は、4200円×80日=336000円となります。
任意保険基準
任意保険基準の場合、各保険会社によって金額は異なるのですが、だいたいの任意保険会社が旧任意保険基準に近い計算方法を採用しています。
それによると、以下の通りです。入院慰謝料と通院慰謝料で、計算方法が異なります。
- 入院慰謝料
最初の3ヶ月までの入院は、1ヶ月あたり8400円です。
4ヶ月目は6733円、5ヶ月目は5866円、6ヶ月目は5033円、7ヶ月目は4200円、8ヶ月目は3800円、9ヶ月目は3333円、10ヶ月目と11ヶ月目は2533円、12ヶ月目は2100円、13ヶ月目は1666円、14ヶ月目以降は、一月ごとに1266円が足されます。
- 通院慰謝料
最初の3ヶ月までは、1ヶ月あたり4200円です。
4ヶ月目は3366円、5ヶ月目は2933円、6ヶ月目は2533円、7ヶ月目と8ヶ月目は2100円、9ヶ月目と10ヶ月目は1666円、11ヶ月目は1266円、12ヶ月目と13ヶ月目は866円、14ヶ月目以降は、一月ごとに833円が足されます。
一例ですが、任意保険会社では、以下のような金額が採用されています。
入院 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | 8ヶ月 | 9ヶ月 | 10ヶ月 | |
通院 | 25.2 | 50.4 | 75.6 | 95.8 | 113.4 | 128.6 | 141.2 | 152.4 | 162.6 | 170.2 | |
1ヶ月 | 12.6 | 37.8 | 63 | 85.6 | 104.7 | 120.9 | 134.9 | 140.4 | 157.6 | 167.6 | 173.9 |
2ヶ月 | 25.2 | 50.4 | 73 | 94.6 | 112.2 | 127.2 | 141.2 | 152.5 | 162.6 | 171.4 | 176.4 |
3ヶ月 | 37.8 | 60.4 | 82 | 102 | 118.5 | 133.5 | 146.3 | 157.6 | 166.4 | 173.9 | 178.9 |
4か月 | 40.8 | 69.4 | 89.4 | 108.4 | 124.8 | 138.6 | 151.3 | 161.3 | 168.9 | 176.4 | 181.4 |
5ヶ月 | 56.8 | 76.8 | 95.8 | 114.6 | 129.9 | 143.6 | 155.1 | 163.8 | 171.4 | 178.9 | 183.9 |
6ヶ月 | 64.2 | 83.2 | 102 | 119.8 | 134.9 | 140.4 | 157.6 | 166.3 | 173.9 | 181.4 | 185.4 |
7ヶ月 | 70.6 | 89.4 | 107.2 | 124.3 | 136.7 | 149.9 | 160.1 | 168.8 | 176.4 | 183.9 | 188.9 |
8ヶ月 | 76.8 | 94.6 | 112.2 | 128.6 | 141.2 | 152.4 | 162.6 | 171.3 | 178.9 | 186.4 | 191.4 |
9ヶ月 | 82 | 99.6 | 116 | 131.1 | 143.7 | 154.9 | 165.1 | 173.8 | 181.4 | 188.9 | 193.9 |
10ヶ月 | 87 | 103.4 | 118.5 | 133.6 | 146.2 | 157.4 | 167.6 | 176.3 | 183.9 | 191.4 | 196.4 |
弁護士基準
弁護士基準では、通常のケガの場合と軽傷のケガの場合とで、慰謝料の基準が異なります。
軽傷というのは、「痛い」や「しびれる」などの自覚症状しかなく、外形的には異常が確認できないケースです。
典型的なのはむちうちで、レントゲン検査などをしても症状を把握することができない場合です。
軽傷の場合、通常のケースの3分の2程度に慰謝料が減額されます。
具体的には、以下のような数値となります。
【通常のケガの場合の表】
入院 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | 8ヶ月 | 9ヶ月 | 10ヶ月 | |
通院 | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 | 266 | 284 | 297 | 306 | |
1ヶ月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 | 274 | 291 | 303 | 311 |
2ヶ月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 | 281 | 297 | 308 | 315 |
3ヶ月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 | 287 | 302 | 312 | 319 |
4ヶ月 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 | 292 | 306 | 326 | 323 |
5ヶ月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 | 296 | 310 | 320 | 325 |
6ヶ月 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 262 | 282 | 300 | 314 | 322 | 327 |
7ヶ月 | 124 | 157 | 188 | 217 | 244 | 266 | 286 | 301 | 316 | 324 | 329 |
8ヶ月 | 132 | 164 | 194 | 222 | 248 | 270 | 290 | 306 | 318 | 326 | 331 |
9ヶ月 | 139 | 170 | 199 | 226 | 252 | 274 | 292 | 308 | 320 | 328 | 333 |
10ヶ月 | 145 | 175 | 203 | 230 | 256 | 276 | 294 | 310 | 322 | 330 | 335 |
【軽傷の場合の表】
入院 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | 8ヶ月 | 9ヶ月 | 10ヶ月 | |
通院 | 35 | 66 | 92 | 116 | 135 | 152 | 165 | 176 | 186 | 195 | |
1ヶ月 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 | 160 | 171 | 182 | 190 | 199 |
2ヶ月 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 | 166 | 177 | 186 | 194 | 201 |
3ヶ月 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 | 172 | 181 | 190 | 196 | 202 |
4ヶ月 | 67 | 955 | 119 | 136 | 152 | 165 | 176 | 185 | 192 | 197 | 203 |
5ヶ月 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 | 180 | 187 | 193 | 198 | 204 |
6ヶ月 | 89 | 113 | 133 | 148 | 162 | 173 | 182 | 188 | 194 | 199 | 205 |
7ヶ月 | 97 | 119 | 139 | 152 | 166 | 175 | 183 | 189 | 195 | 200 | 206 |
8ヶ月 | 103 | 125 | 143 | 156 | 168 | 176 | 184 | 190 | 196 | 201 | 207 |
9ヶ月 | 109 | 129 | 147 | 158 | 169 | 177 | 185 | 191 | 197 | 202 | 208 |
10ヶ月 | 113 | 133 | 149 | 159 | 170 | 178 | 186 | 192 | 198 | 203 | 209 |
軽傷の場合には、通院期間の考え方についても注意が必要です。
この場合、実通院日数が少ないと、実通院日数×3程度の数値を通院日数として計算されるからです。
むちうちなどになり、通院が不定期で頻度も少ない場合には、入通院慰謝料を減らされてしまう可能性があるので、注意が必要です。
4-2.後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、等級によって決まります。自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準ともに定額になっているので、計算しやすいです。
具体的には、以下の表の通りです。
認定された等級 | 弁護士基準 | 任意保険基準(参考値) | 自賠責基準 |
1級 | 2800万円 | 1300万円 | 1100万円 |
2級 | 2370万円 | 1120万円 | 958万円 |
3級 | 1990万円 | 950万円 | 829万円 |
4級 | 1670万円 | 800万円 | 712万円 |
5級 | 1400万円 | 700万円 | 599万円 |
6級 | 1180万円 | 600万円 | 498万円 |
7級 | 1000万円 | 500万円 | 409万円 |
8級 | 830万円 | 400万円 | 324万円 |
9級 | 690万円 | 300万円 | 245万円 |
10級 | 550万円 | 200万円 | 187万円 |
11級 | 420万円 | 150万円 | 135万円 |
12級 | 290万円 | 100万円 | 93万円 |
13級 | 180万円 | 60万円 | 57万円 |
14級 | 110万円 | 40万円 | 32万円 |
たとえば、むちうちになると12級や14級になることが多いですが、同じ14級の等級が認定された場合でも、弁護士基準になると他の基準の3倍程度の数値になっています。
4-3.死亡慰謝料
それぞれの基準による死亡慰謝料の金額も確認しましょう。
自賠責基準
自賠責基準の場合被害者がどのような人であっても、一律で死亡慰謝料は350万円です。
ただ、遺族がいる場合、遺族固有の慰謝料が認められます。
遺族の人数により、金額が異なります。
また、被害者に扶養されていた遺族がいる場合、さらに200万円慰謝料が上がります。
表にすると、以下の通りです。
- 被害者のみ 350万円
被扶養者なし | 被扶養者あり | |
遺族が1人 | 550万円 | 750万円 |
遺族が2人 | 650万円 | 850万円 |
遺族が3人 | 750万円 | 950万円 |
自賠責保険で認められる遺族の範囲は、配偶者と子どもと親です。
任意保険基準
次に、任意保険基準による死亡慰謝料の相場をご紹介します。
これについては、保険会社によっても異なりますが、以下は一例となります。
- 被害者が一家の支柱であった 1500~2000万円程度
- 被害者が配偶者であった 1300~1600万円程度
- 被害者が未成年者(未就労) 1200~1600万円程度
- 被害者が65歳異常の高齢者 1100~1400万円程度
弁護士基準
弁護士基準の場合には、以下のような金額となります。
- 被害者が一家の支柱であった 2800万円〜3600万円程度
- 被害者が、母親や配偶者であった 2000万円〜3200万円程度
- 被害者が独身者であった 2000万円~3000万円程度
- 被害者が高齢者であった 1800万円〜2400万円程度
- 被害者が子どもであった 1800万円〜2600万円程度
5.すべてにおいて、最も高額になるのは弁護士基準
以上、3種類の慰謝料の計算方法をご説明してきましたが、すべての慰謝料の計算方法において、最も高額になるのは弁護士基準です。
どのようなケースでも、弁護士基準で計算すると慰謝料の金額が上がるので、相手と次段交渉をするときには、弁護士基準で計算することが何より重要です。
6.慰謝料請求を弁護士に依頼すべきメリットと理由
慰謝料請求を弁護士に依頼すると、いろいろなメリットがあります。
以下でその内容をご説明します。
6-1.弁護士基準で計算できる
交通事故の示談交渉を弁護士に依頼すると、弁護士基準で慰謝料を計算できることが何よりのメリットです。
被害者が自分で相手と次段交渉をすると、相手は弁護士基準で計算してくれることはありません。
当然のように任意保険基準を適用されてしまうので、請求できる慰謝料の金額が大きく下がってしまいます。
確実に高額な慰謝料を請求したければ、必ず弁護士に慰謝料請求を依頼すべきです。
6-2.過失割合を減らして慰謝料を増額できる
交通事故で高額な慰謝料を獲得するため重要なことは、賠償金の計算基準だけではありません。
過失割合も同じくらい重要です。
過失割合とは、事故の結果に対する当事者の責任の割合です。
被害者の過失割合が高いと、その分相手に請求できる慰謝料の金額が減ってしまうのです。
そこで、高額な慰謝料を請求するためには、なるべく自分の過失割合を小さくしなければなりません。
ところが、被害者が相手の保険会社と示談交渉をすると、相手は被害者に大きな過失割合を当てはめてくるので、不当に大きく過失相殺をされて、慰謝料の金額を下げられてしまいます。
弁護士に示談交渉を依頼すると、裁判の適切な基準を当てはめて過失割合を認定してもらえるので、相手から不当に大きな過失割合を当てはめられていたケースでは、大きく慰謝料をアップすることが可能です。
6-3.確実に後遺障害等級認定を受けて慰謝料を増額できる
交通事故で、高額な慰謝料を獲得するためにもう1つ重要なことは、後遺障害の等級認定です。
後遺障害の等級が高くなるとその分高い慰謝料が支払われるからです。
同じ症状が残っていても、等級認定に失敗したら、低い等級の認定しか受けられず、慰謝料が減ってしまう可能性があります。
そこで、高額な慰謝料を獲得したいのであれば、確実に高い等級の後遺障害認定を受けなければなりません。
しかし、被害者が自分で後遺障害の等級認定の手続きを行うと、医学的な知識も不足していますし手続きについても明るくないので、うまくいかないことが多いです。
思うような等級認定を受けられなかったら慰謝料が大きく下がってしまうのです。
弁護士であれば、後遺障害の等級認定手続きに精通していますし、ノウハウも豊富に持っています。
最低限の医学的知識を持っている弁護士も多いですし、交通事故問題に協力的な医師と提携関係にある弁護士もいるので、高い等級の後遺障害認定を受けられる可能性が上がります。
このことも、弁護士に依頼すると慰謝料が増額する理由の1つです。
7.自分で慰謝料請求をして、弁護士基準を適用してもらえないの?
それでは、自分で慰謝料請求をするときに、弁護士基準を適用してもらうことはできないのでしょうか?
たとえばこの記事を読んだ方は、一応弁護士基準による慰謝料の計算方法がわかったでしょうから、この知識をもって相手と示談交渉をしたら、高額な弁護士基準で計算をしてもらえそうにも思えます。
ただ、そのようなことは実際には難しいでしょう。
まず、被害者が自分で示談交渉をするときに相手に弁護士基準で慰謝料を計算してほしいと言っても、相手に断られるでしょう。
また、具体的にどのようにして計算するのか説明するように言われますし、いろいろな面で反論をされます。
慰謝料の金額は高くしても他の賠償金を減額されたり、大きく過失相殺をされて賠償金全体を下げられたりすることもあります。素因減額などの、その他の減額事由を主張されることもあるでしょう。
このようにして示談交渉でもめてしまうと、相手の保険会社は弁護士を代理人に立ててきます。
そうなると、余計に相手との力の差が発生してより不利になってしまいます。
被害者側に弁護士がついたときに相手が弁護士基準を適用するのは、示談が不成立になったら弁護士が裁判を起こすことが念頭にあるためです。
裁判になったら結局は裁判基準が適用されますし、相手の保険会社にとっても、裁判は、時間的にも労力的にも費用的にも、無駄です。
そこで保険会社は、弁護士相手に「任意保険基準を適用してほしい」と主張するのは無駄だとわかっているため、弁護士に対してはそういった主張はしません。
これに対し、被害者本人と示談交渉をする場合、示談が決裂しても必ずしも裁判にはなりませんし、被害者の知識は弁護士に比べて不足しているので、保険会社は強気で任意保険基準を適用してきます。
8.高額な慰謝料を獲得する方法
最後に、被害者が高額な慰謝料を獲得するための注意点をご紹介します。
8-1.治療を最後まで継続する
交通事故で高額な慰謝料の支払いを受けるためには、何より治療を最後まで継続することが大切です。
入通院慰謝料は、治療日数に応じて認められるので、治療を途中で辞めると、その分の入通院慰謝料が減ってしまいます。
また、後遺障害は、治療が終了した時点において残っている症状に認められるものなので、治療を最後まで行わないと、後遺障害の等級認定を受けることも難しくなってしまいます。
被害者が事故後通院していると、相手の保険会社が「治療はそろそろ終わり」「これ以上治療を続けるなら治療費を打ち切る」などと言ってくることがありますが、そのような言葉に従ってはいけません。
8-2.治療を頻繁かつ定期的に受ける
交通事故後の治療は、ある程度以上の頻度で、定期的に受けるべきです。
このことも、やはり入通院慰謝料に関連します。
入通院慰謝料は、治療日数に応じて計算されますが、通院日数が少ないと、実通院日数を基準にして計算されてしまうことがあるためです。
自賠責基準なら、実通院日数が少ないと、その2倍の数字が基準になってしまいますし、弁護士基準でも、治療が不定期かつ頻度も少ない場合には、実通院日数の3.5倍程度の数値で計算されてしまうことがあります。
そこで、最低でも月10日程度、1週間に3回程度は通院をするようにしましょう。
8-3.高い後遺障害の等級認定を受ける
交通事故で高額な賠償金を獲得するためには、高い等級の後遺障害等級認定を受けることが重要です。
そのためには、弁護士に手続を依頼して、「被害者請求」の方法で、等級認定の申請をしてもらいましょう。
もし、自分で等級認定申請をして、非該当(後遺障害が認められないこと)や、低い等級になってしまった場合には、「異議申し立て」をして、等級の変更をしてもらう必要があります。
交通事故問題に強い弁護士の場合、後遺障害の異議申し立てにも力を入れている事務所がたくさんあるので、そういった事務所を探して後遺障害の手続を依頼しましょう。
まとめ
今回は、交通事故の慰謝料の相場と弁護士に依頼すべき理由について、ご説明しました。
交通事故の慰謝料には入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類があります。
それぞれについて、3つの計算方法がありますが、弁護士基準で計算すると最も高額になります。
交通事故で、なるべく高額な慰謝料を獲得するには、弁護士に対応を依頼する必要性が高いです。
今回の記事を参考にして、交通事故に強い弁護士を探してなるべく高額な慰謝料の支払いを受けましょう。
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